2007年9月25日火曜日
ラトルのハイドンをかじり聴き
ああ、「ピリオド派」によって確立されたoral traditionは、間違いなくモダン・オケにも浸透し、当然のように演奏されるようになったのだなあ。それに加え、「え、これスコアにあったっけ?」という箇所が多く、後で確かめたくなった。コントラバスの音が膨らんでくるところは、やっぱりモダンっぽさが残っているのだろうけれど、宮廷の楽隊出身のオーケストラという位置づけがよく分かる演奏だと思った。
それにしても、ラトルも20年前だったら、こんな風にハイドンを演奏するなんてことを、思いついただろうか?
とても面白いハイドン集。
ところで、ピリオド派の台頭っていうのは、こういうメジャー・オケには脅威だったんじゃないかと思うことがある。だって、おそらくピリオド派の演奏の方が作曲家のイメージに近いのだとすれば、それまでモダン・オーケストラの雄が流布してきたoral traditionの「権威」 (というのがもしもあるとすれば) が薄れてしまったんではないかと思えてしまうからだ。
失われたoral traditionは帰ってこないとは思うけれど、ある程度科学的な推測ができたということなんだろう。そして、それには従わざるを得ないというか。「作曲家が思い描いていたイメージにより近い演奏を」というのが演奏者たちの目的であるならば、そこに、ピリオド派台頭以前にはなかった力関係が働くように思えてしまう。
2007年9月23日日曜日
最近聴いた音楽と読んだ本の記録
いやあ、こういうのを聴くと、ベートーヴェンがいかにぶっとんでたかってのが実感できますよねえ。
Hummel, Piano Sonata in F# Minor, Op. 81. Hae Won Chang, piano (Naxos 8.553296, [Naxos Music Library])
William Schuman, Undertow, Ballet Theatre Orchestra; Joseph Levine, conductor (EMI Classics)
New WorldのLPのライナーの方が作品について詳しく書いてあるのは仕方がないことか。 Doubling in Brass, Morton Gould and His Symphonic Band (RCA LSC-2308, LP) スーザのマーチ、アメリカ愛国歌のグールド編曲、そしてグールドの吹奏楽オリジナル作品2曲という構成。似たようなアルバムに 現在Hybrid SACDで出ている"Brass & Percussion" があり、これとは3曲重なっている。 "Doubling in Brass" のような企画は、モートン・グールドの人気が高かったから通ったんだろうと思う。ちなみにオリジナル作品は、最新作として《セント・ローレンス組曲》、そしてスタンダードになった1曲として《ジェリコ》。黒人霊歌も引用した後者は名演だと思う。特にラッパの音からジェリコの崩落の部分は、Living Stereoらしく豪快な音が入ってて圧巻。でもやや低音不足かもしれない。これってRIAAカーブじゃないんだっけ?
Karol Szymanowski, Works for Violin and Piano (Complete). Nicolas Dautricourt, violin; Laurent Wagschal, piano (Saphir http://ml.naxos.jp/?a=LVC1035)
"Soultrane," John Coltrane with Red Garland. (東芝EMI [Prestige] LP)
Barbara L. Tischler, An American Music: The Search for an American Musical Identity (Oxford UP, 1986).
ちらっと眺めたところ、何か具体的に音楽的な要素を挙げて、何がアメリカ音楽らしさを作っているのか、というような話にはなってないようだ。そうではなくて、作曲家や音楽家の意識、オーケストラのレパートリー選択などの中に見出せるナショナリズム的な動きを歴史的文脈から眺める内容ではないかと思う。いろんな言説が引いてあって楽しく読める。 おそらく学際的な内容といえるのだろうし、音楽以外の分野を含めた広い歴史からどういうものが見えて来るのかを考えるのには面白いかもしれない。反対に、音楽的なアメリカニズムの創出といったことを考えるためには、また別のものを読まねばならないのではないかと思う。 第1次大戦中のニューヨーク・フィルやボストン響におけるドイツ音楽ならびにドイツ系音楽家の扱われ方などは興味深い。 とりあえず、いろんな疑問が湧いてくるので、良い本なんだろう。Carol Ojaの本とかも、こういうのがあったから出来たのかな、なんて思ってみたり。
Wilfrid Mellers, Music in a New Found Land (Faber and Faber, 1964)
こちらもちらっと眺めただけ。そして、ちょっと手強い印象がある。ヨーロッパにはないものが意識的に見えるという強みはありそうだ。あと、いわゆる「名曲」を羅列しているのではなくて、独自の選択眼で作品を選び、テーゼをサポートさせているのは、やはり評価すべきだと思う。 でも、コープランドのピアノ変奏曲の開始が曖昧な3度、黒人ブルースの6度と7度、シナゴーグのユダヤ音楽の跳躍で始まる…う~ん、そういうのって、私は言いにくいなあ。
2006年12月28日木曜日
ディズニー本、発売になりました
初めての単行本、『ディズニー映画音楽徹底分析 ~これ1冊でディズニー映画音楽のすべてがわかる~』がアマゾン経由で購入できるようになりました。どうぞよろしくお願いします。
2006年12月22日金曜日
ディズニー本、発売近し
21日、スタイルノートさんから、私の単行本、『ディズニー映画音楽 徹底分析』が10冊献本された。前にも書いたけれど、特徴としては、とにかく情報量の多さだろうか。「本国でもマニアしか見ないだろうな」という作品も、長編というだけで全部入っている。ミッキーマウス・シリーズのアニメに引用された曲のリストなんてのも、初めての試みかも。
本当は短編作品における作曲家のリストというのもあって、Excelファイルになってるんだが、これは割愛された。文献リストも、脚注の参考文献を持って代えることになったようだ。ディスコグラフィーがないのは残念かな。まあ、いずれも私のサイトでPDFファイルとしてアップしましょう。
出版社の社長さんは「次は、アメリカのライトクラシックでしょうか!?」とおっしゃってくれた。私はこれに対して「親しみやすい作品を中心に組んだアメリカ音楽の本といいのもいいですね。」と返そうと思う。本当はハードコアな実験音楽を含めた重厚な本も必要だと思うが、軽めのものを書きながら、いろいろ調べるというのもよいのかもしれない。ルロイ・アンダーソンとファーディ・グローフェという、日本では学校現場で知られている作曲家たちもいるのだし。
以前、某出版社向けにポップス・オーケストラのことを書いたことがあり、その原稿の一部は「クはクラシックのク」という『レコ芸』の記事にさせていただいた。本来は、その「セミクラシック」を扱った記事から、各ポップス・オーケストラへと続いていく章を考えていたのだ。おかげでこの類のCDが増えてしまった。John WilliamsのBoston PopsのCDは、本国アメリカでは、ほとんど廃盤。日本では依然人気があるので廉価で出ている。『CDジャーナル』のレビューで「JWの知名度は本国アメリカ以上」と書いたのは、そういうこともあってだ。アメリカでは映画音楽を聴けば「ああ」ということはあると思うけど、吹奏楽をやる連中がジョン・ウィリアムズという名前を知っているとは思えないのである。スクール・バンドがほとんどだし、その機能といえば、フットボールのマーチングバンドに近いですからね。
昨日も仕事以外のCDを聴く。やはり民族音楽だ。某所でJVC World Sound Specialのオセアニア関連がさらに入手できた。サモアとトンガの音楽が集められた『ポリネシアの音楽 [IV] 』が良かったかも。
2006年12月18日月曜日
民族音楽のCDを楽しむ
・『南米の黒人音楽~神々への讃歌』 Warner Music (Nonesuch) WPCS-5242
・『マージナル・ポリネシアの音楽:フィジー/ウォリス、フトゥナ/トゥヴァル JVC VICG-5276
コール・アンド・レスポンス、ハーモニー、ラトルの使用など、共通点が多く、どっちのCDを聴いていたのか分からなくなるほどだった。それがどういう経緯でそうなったのか、enculturationがどこかにあるのか、はたまた偶然なのか、そういった点は、もっと調べてみないと分からない。フィジーにインド人が多いというのは初めて知った。しかもその背後にはイギリスの植民主義があったということも。政治が音楽に与える影響も、実に強い。
・『モンゴルのシャマニズム』King (Seven Seas) KICC 5748
本来こういった「音楽」は通常の音楽のように「楽しむ」ものであってはいけないと述べていたのは若林忠宏氏だっただろうか。文脈から切り離された映画音楽をブライアン・イーノは楽しんで聴くというが、その本来の文脈によっては、それが限りなく罪になるのだということも、考えておく必要があるに違いない。
・『パキスタン・カフィール地方の音楽』 King (Albatros) KICC 5767
インドとパキスタンが不仲であるのはテレビのニュースで観るけれど、食文化が似ているし、音楽的にはどうなのだろう、という興味で買ってみた。ただ、どういった地域をサンプルするかによって、かなり違うんだろうなあ。
2006年12月4日月曜日
最近仕入れた資料
・堀内敬三『音楽五十年史 (上) 、 (下) 』 (講談社学術文庫)
音友の『音楽明治百年史』も持ってるけれど、明治から太平洋戦争下までは、こちらの方が詳しいという村田武雄の解説に釣られて買ってしまった。前々から置いてあったしなあ。
・デイヴィッド・G・ヒューズ『ヨーロッパ音楽の歴史』 (朝日出版社)
下巻は持ってたんだけど、意外に入手が難しかったので、上巻を仕入れることに。グラウト/パリスカとは、また違った面白さがあると思う。
・伊庭孝『日本音楽史』 (日本コロムビア、LP2枚)
おおお、ついに見つけた、伊庭孝の『日本音楽史』。しかもSPではなくて、LPバージョン。解説書が見つからないので、後で郵送しますとのこと。いずれにせよ、貴重な音源とされているので、嬉しい。本 (『日本音楽概論』) の方は、さすがに高くて買えませんが…。
そのほかお茶の水ユニオンでシエナ・ウインド・オーケストラやら、マルセル・ミュールやら、ミトプーのアメリカ音楽集 (AS Disc) などを仕入れてきました。
夜は渋谷タワーにて、MTTによるアメリカ音楽のDVDを入手。
2006年11月19日日曜日
音楽教育って、そういえば、
Music Appreciation with the Victrola for Children. Camden, NJ: Victor Talking Machine Company, 1923.
実は音楽鑑賞を研究されている方から、いただきました。1920年代。古いとするか、最近と考えるか。いずれにせよ、この本はアメリカのビクター、ということはのちにRadio Company of America (RCA) と一緒になる (?) 前のことなんでしょうか。そういえば、ラジオが全米的に影響を持つようになったのは1930年代。その前はレコードだったということでしょう。もちろんその前には教師が楽器を演奏して行なう授業だったのでしょう。 鑑賞というものが、そもそも、幅広いレパートリーの音楽に触れさせるという意義があると思います。レコードがそれを可能にした。今は映像もありますが、実演ができない時は、どうしても視聴覚装置の助けを必要とします。音を扱うのが音楽ですからね。体育の鑑賞教材ってあるのかな? オリンピック選手のドキュメンタリ-とかを観るのは…でも、ちょっと体育には分類できないか。 今日は別の作業で忙しいので、まだ中身を検討できませんが、いずれざっと目を通してみようと思います。どんな曲が使われているのか。ぱっとみたところ、歌唱教材のレコードも入ってるようですし、レコードと、クラス内で行なう実技活動が融合されているのかな、という印象です。読むのが楽しみ。