2007年9月25日火曜日

ラトルのハイドンをかじり聴き

ハイドン 交響曲第88番ト長調《V字》サイモン・ラトル指揮ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 (EMI国内盤) 

ああ、「ピリオド派」によって確立されたoral traditionは、間違いなくモダン・オケにも浸透し、当然のように演奏されるようになったのだなあ。それに加え、「え、これスコアにあったっけ?」という箇所が多く、後で確かめたくなった。コントラバスの音が膨らんでくるところは、やっぱりモダンっぽさが残っているのだろうけれど、宮廷の楽隊出身のオーケストラという位置づけがよく分かる演奏だと思った。 

それにしても、ラトルも20年前だったら、こんな風にハイドンを演奏するなんてことを、思いついただろうか?

とても面白いハイドン集。

ところで、ピリオド派の台頭っていうのは、こういうメジャー・オケには脅威だったんじゃないかと思うことがある。だって、おそらくピリオド派の演奏の方が作曲家のイメージに近いのだとすれば、それまでモダン・オーケストラの雄が流布してきたoral traditionの「権威」 (というのがもしもあるとすれば) が薄れてしまったんではないかと思えてしまうからだ。 

失われたoral traditionは帰ってこないとは思うけれど、ある程度科学的な推測ができたということなんだろう。そして、それには従わざるを得ないというか。「作曲家が思い描いていたイメージにより近い演奏を」というのが演奏者たちの目的であるならば、そこに、ピリオド派台頭以前にはなかった力関係が働くように思えてしまう。

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