2015年5月20日水曜日

ちゃんと調べてみる必要性

ガーシュインがラヴェルに弟子入りを断られたという話がされたのは、ナディア・ブーランジェに教わりにいった先のパリの出来事だということを言う人がいるらしい。「そうだったっけ?」と気になって、ちょっと調べてみた。

いくつか資料を眺めてみると、実はその発言はラヴェルがアメリカに来た時の話ということになる。エヴァ・ゴティエ宅で行われたパーティーで(ホステス以外は全員男性だったという、ラヴェルの要望で)、当日の通訳をしたゴティエが語ったところによると、ラヴェルは "it would probably cause him to write bad 'Ravel' and lose his great gift of melody and spontaneity."と語ったらしい。

Howard Pollackの伝記によると、ガーシュインもラヴェルも互いの音楽語法についてあまり知らなかったのだから、ガーシュインの申し出というのは"quixotic" (現実離れ/夢物語?) だったが、ラヴェルの方はそれをかなり真剣に考えて断ったようだ。親切にもラヴェルはナディア・ブーランジェに教わったらどうかとガーシュインにアドバイスしており、またパーティーの翌日には自らブーランジェ宛にガーシュインを紹介する手紙をラヴェルは書いているのだった。

ガーシュインを語るときによく使われる「1流のガーシュイン、2流のラヴェル云々」という言い回は、音楽評論家のDavid Ewenあたりが最初に広めたしらしい。 "Why do you want to become a second-rate Ravel when you are already a first-rate Gershwin?" がそうだ。

さらに映画『アメリカ交響楽』で"Gershwin, if you study with me, you'll only write second-rate Ravel instead of first-rate Gershwin" となって、定着したのだという。

図書館を使うことについて

佐賀・武雄市図書館に行ってみた(上)「公共」置き去り?、カフェ併設来館者3倍に:ローカルニュース : ニュース : カナロコ -- 神奈川新聞社
http://www.kanaloco.jp/article/69527

日本の公共図書館を無料貸本屋付のカフェにする、このような動きは、アメリカの公共図書館とはまた違った方向へ向かっているような気がします。アメリカの場合、いわゆる新書や文庫というものがなく(小さなサイズのペーパーバックはフィクション中心ですね)、ハードカバーが高いという問題はあると思いますが、それにしても「人が来ればよい」ということだけで「公共」は語れないでしょうし、人を呼び集めるときに、どのような施策があるのかについて、一考を迫っているようにも思います。

ちょっと考えてしまうのが、例えばスタバが儲からなくなって撤退したら、この図書館はどうなるのだろうという疑問。スタバが永遠に続くと仮定すると、そのような問いは馬鹿げているのかもしれないけど、スタバも「神」ではありませんので。

それから顧客データと図書館カードの問題がクローズアップされましたけれど、いずれにせよ、図書館に来る客層というのは、詳細なデータはなくとも店員が直接間近で把握できるのですから、当然企業体としておいしい商売と考えられます。図書館には食堂なり喫茶室が付いていることはありますが、それはどちらかというと厚生施設としての役割を担わされているように思います。この場合、スタバのような企業が独占的に引き受けているのは、そのような機能なのか、あるいは違うのか。いろいろ問題はありそうです。

日本の学校で「勉強」というのは、次の学校へ入学するための試験のためにするものであり、学習内容は、その教科書の中から出題されるというものになってはいないでしょうか? 決められた枠組みの知識をどれだけ記憶できるかということで学力を計るということが「勉強」であれば、図書館というのは、その枠内の知識を詰め込むために参考書なりを使って学ぶ場所になり、図書館にいくら本を並べておいても、自習室にしかならないということでしょう(もちろん気晴らしに本を読む可能性はあるとしても)。つまり図書館をいかに使うのか、それがいかに大切なことなのかということは知らずに大学に入り、そこで突如としてレポートを書く必要に迫られてくるのですね。これはやはり、日本の教育の問題でもあると思います。

ところで、以下はアメリカの公共放送の子ども向け番組『アーサー』で放送された、読書と図書館の使用を促すエピソードの一部です。図書館に人を連れてくるということであれば、人気のカフェでやるのではなく、こういうアプローチの方が個人的には好みです。

ARTHUR |  Having Fun Isn't Hard When You've Got a Library Card