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2026年6月21日日曜日

国際急行列車 (The International Railroad Express) について調べてみた

小学校の鑑賞教材として使われ、あるいは運動会の音楽としてCDに収録されている《国際急行列車》という曲がすごく気になってしまい、いろいろ調べてみました。

平成14年度『音楽のおくりもの (小学校音楽)』2 鑑賞 (DCT-702) という教科書準拠CDのライナーノーツ、12ページによりますと(著者不明)、作曲者のブーエ(E. Boue)は生没年不詳。国際急行列車のオリジナル・タイトルは "Galop du Chemin de far" であり、楽譜はフランス のアルエット社より出版されていたが、アルエット社は、20世紀初頭に他の会社に吸収され、現在出版されているオリジナルの楽譜はないということでした。

ちなみに "Galop du Chemin de far" というタイトルで IMSLP を探ってみると、ワルトトイフェル作曲のピアノ曲に同じタイトルの楽譜がみつかります。作曲者がブーエではないので、当然のように音源で聴く《国際急行列車》とは別の曲でした。

それで、AIに《国際急行列車》について尋ねてみたところ、Apple Music からのデータを引っ張ってきたようで、そこでは作曲者の綴りが Bouet となっているようです。さらに曲目は"Galop du Chemin de far" ではなく英題が "International Express"、 仏題が "L'Express International" ということでした。それにしても、ファーストネームが E. としか分からず、フルでないのは気になります。今後の課題として、いまのところは、ここまで。

ただ、《国際急行列車》の音源自体は日本でも古くから発売されていたことが分かりました。YouTubeに挙がっている《国際急行列車》の動画を見ると、文部省制定の観賞用曲として日本コロムビアがリリースした『幼稚園レコード』の1枚 (AK 4) に、この曲が収録されていました。この音源が発売された頃には作曲者がブーエというのが分かってなかったのか、作曲者不詳とラベルに書かれています。また演奏をしているのはセレブロフ指揮ロシヤ管弦楽団という団体であることも分かります ( ロシヤ管弦楽団   国際急行列車)。同じレコード番号の音源は、色の違うレーベルでもリリースされていたようです (SP盤紹介ー33 セレブロフの「国際急行列車」(てこな音盤倶楽部のレコード・ブログ))。

別の動画では『国民学校芸能科音楽 鑑賞音盤 初等科第一学年用』のレコードとして、同じ音源が挙げられていました。ということは、《国際急行列車》という曲は戦前から学校で聴かれていた可能性がありそうです。(国際急行列車 國民學校藝能科音楽鑑賞音盤初等科第一學年用)

ところで上述した『幼稚園レコード』の画像にはAK 4というレコード番号の他に、2W 109276というのもありました。おそらくこれは、海外で発売された音源が原盤となっているっぽいので、この番号で検索してみたところ、Discogs のデータベースから、それっぽいものが出てきました。J. Serebroff's Orch. – The International Railroad Express / Polka Frieda というのがそれなのですが、ここから分かることは、《国際急行列車》という日本語タイトルの元となったのは英語の "The International Railroad Express" であったということです。また『幼稚園レコード』の「ロシヤ管弦楽団」に関しては、J. Serebroff's Orch. から来ていると思われることです。ただ、J. Serebroff の名前から、どうして「ロシヤ管弦楽団」に至ったのかが気になります。

Discogsのデータベースによると、《国際急行列車 (The International Railroad Express)》が録音されたのは、1928年5月、ということで、なかなか古い録音になりますね。しかも録音場所が他ならぬニューヨークです。またレコード番号が Columbia 12081-F という番号で、ちょっと調べてみたら、このFシリーズというのは、分類としては "10-inch general ethnic instrumental" なんだそうです(Columbia Records 78rpm Numerical Listing Discography)。すなわちヨーロッパからアメリカへ渡った移民をターゲットにした録音シリーズである可能性すらありそうです(語学レコードもFシリーズから発売されていたようですね)。

残念ながら、J. Serebroffという人物が誰なのか、私には分かりません。Google AIによると「指揮者またはバンドリーダー」で「当時のスタジオ・ミュージシャン、あるいは移民コミュニティの音楽家であったとされていますが、個人の詳細な伝記的記録はほとんど残っていません」とのこと。ただ、このAIの回答には何か典拠らしきものが示されていないので、それを信用していいのか分かりません。このAIは、さらに続けます。

当時は、レコード会社の専属編曲家やスタジオのリーダーが、特定のジャンルを録音する際(例:今回はロシア風、今回はポーランド風など)に、こうした個人の名前を冠した即席の「オーケストラ」や「アンサンブル」を名乗ることが一般的でした。
ここまで言われると、J. Serebroff という人物がロシア人なのかも本当はよく分からないという感じがします。名前はロシア系っぽいですけれど…アメリカは多民族国家ですし。ただ、上記引用の内容からすると、例え指揮者の出自が不明確でも、「ロシア風」の音楽を録音したのでロシア系の名前が付けられているということは言えるのかもしれません。そうすると、《国際急行列車》はフランスの曲ではなくロシア風の音楽…なのでしょうか??? まあ確かに、セレブロフ指揮ロシヤ管弦楽団の演奏には途中でコサック・ダンサーみたいな掛け声も入ってます…。

なお、Serebroff のファースト・ネームなのですが、昭和館が所蔵している音源のデータベースによるとJakovなんだそうです。また、このレコードのデータベースには、演奏者がJakov Serebroff's Russian Orchestra と書かれていて、先述した「ロシア管弦楽団」とつながってきます (International Railroad Express | 昭和館デジタル・アーカイブ)。指揮者のロシア人(フルネームからはロシア系ユダヤ人っぽい感じもありますが)判定は、誰が行ったのか、あるいは誰かが原盤元に問い合わせたのか…。あるいは単にロシア音楽を演奏するオーケストラなのか??? いろいろ謎が多いです。

ちなみに日本人がSPに録音した《国際急行列車》の音源もあったようです。プーエ(!)作曲であるこの曲が伊藤翁介による編曲を施した形で日本ビクター管弦楽団によって収録されています  (ビクターレコード邦楽SP盤目録 | 78Music)。

学校教育用の低学年向けの音源には、いわゆる「描写音楽」に分類される軽妙な作品が多く収録されていますが、なかなか謎な曲も多いような気がします。ただそれが長らく学芸レコードに収録されているということは、現場的にはウケがよくて使いやすい、ということではあるのでしょうね。


2026年6月6日土曜日

ジョリヴェ:交響曲第1番、オンド・マルトノ協奏曲ほか

André Jolivet (1905-1974) : Symphony No. 1 (1953)

学芸大院在学時に、フォノテークという部屋がありました。そこにあった棚のなかに現代音楽の古いレコードがあり、そのレコードの中に、ジョリヴェ作品をみつけました。その熱いサウンドに圧倒され、強い印象を残しました。当時レコードを借りた時にライナーノーツを複写したようで、調べてみたら、《平和の日のためのミサ曲》と《礼拝組曲》が収録された1枚 (フィリップス [日本ビクター] SFL-8535)、オーボエ主奏、管楽五重奏のためのセレナード (日本コロムビア OS-3381) でした(カップリングはフランセのフルート、オーボエ、クラリネット、バスーンとホルンのための五重奏曲ですね)。なかなか渋い(?)。

それで最近音楽評論の石塚潤一さんがSNSでジョリヴェの交響曲第1番 (1953) に言及されていて(作曲家の湯浅譲二さんが持っていらした楽譜として紹介されていました)ジョリヴェに再び興味を持ち、YouTubeで見つけたのが、上記の演奏です。Georges Tzipine指揮とあってオーケストラが明記されていないのですが、Orchestre National de l'ORTFだというコメントがありました。

冒頭からガツーンとしたサウンドに圧倒され、そのまま引き込まれます。

関連動画としてアンドレ・ジョリヴェのポートレートが案内されましたので、リンクを貼ります。


ジョリヴェって、戦後直後は、日中作曲をして、夜はコメディ・フランセーズで指揮をしていたのですね。

生前のインタビュー動画もみつけました。トランペット協奏曲 (1948) について語っています。この協奏曲ってモーリス・アンドレが録音してましたっけ。


アメリカ留学をしている時にボストンの中古レコード店で買ったのは、以下のオンド・マルトノ協奏曲 (1947) です。ジャケットのインパクトがありました。


レコードのパチパチ音もそのままですが、個人的な思い出として、こちらの動画にリンクを貼っておきます(ノイズなしの録音もYouTubeには上がっているようですね)。

ところで、ジョリヴェが日本に強いインパクトを与えたのは、やはり《赤道コンチェルト》なのでしょうか。上野晃さんのレコードの解説(上記 SFL-8535)によると、1956年、《赤道地方》という副題で、北川正の独奏、上田仁指揮の東京交響楽団によって日本初演されたとのこと。いまさらながら、ジョリヴェがエドガー・ヴァレーズにも学んだことを知り、ジョリヴェの、あのダイナミックなサウンドはヴァレーズ由来でもあるのかあ、と思った次第。

ちなみに《赤道コンチェルト》が世界初演された際の「騒動」が東京交響楽団のサイトに掲載されていました→【特別公開】ジョリヴェ ピアノ協奏曲の初演騒動見聞記/演奏会プログラム「シンフォニー(1956年6月号)」掲載から

私も《赤道コンチェルト》に関しては、東京交響楽団第669回 定期演奏会にて聴いたことがあります。ルシュールの《マダガスカル狂詩曲》も面白かったなあ。




2026年6月4日木曜日

森の水車 (アイレンベルク)、かっこうワルツ、国際急行列車

Richard, Eilenberg (1848-1925): Die Mühle im Schwarzwald, Idylle für Piano von Richard Eilenberg Op. 52

日本で親しまれている曲ながら、その曲の詳細や作曲家については知られていない曲というのは多いような気がします。このアイレンベルグの曲にしても、一時期はとても聴かれていたような気がするのですが、どういう作曲家なのかに関してはあまり関心が向いていないのではないでしょうか。どうやら過去には小学校の鑑賞教材だったためクラシック扱いされながらも、ポピュラーな文脈のクラシック曲なのかも、と思ったりもします(かつては「セミクラシック」という便利な用語もありました)。どんな人が曲を作ったかよりもとにかく聴いて楽しければよいという発想?もポピュラーっぽいといえばポピュラーっぽい。そして、ピアノもあれば吹奏楽もあればオーケストラ版もある。いろんなアレンジがあって、どれがいわゆる「本物」(あるいは初演の形)なのかも分かりません。

ウィキペディアでアイレンベルクについて、さっと見てみると、軍事少年教育機関で育ったとか、普仏戦争に志願兵として参戦し、その後ベルリンに移住して、フリーの作曲家として活躍するなどなかなかユニークな経験を持っているっぽい。作品としても、実はオペレッタなんかも結構発表していたようですが、やっぱり《森の水車》のようないわゆるサロン音楽などと呼ばれている、一種の娯楽音楽に分類される作品で知られているようです。残念ながらアイレンベルクの作品は発表当時から陳腐で軽薄、などと評価されていて、現在もそういう評価が定着してしまっているようで、そのため真剣に調査されていないということがあるのかもしれません。

そういえば《森の水車》やヨハン・エマヌエル・ヨナーソン(Johan Emanuel Jonasson 1886-1956、スウェーデンの作曲家なのですね!)の《かっこうワルツ》について、ある音楽教育学者に教わったことがあるのですが、小学校の鑑賞教材として採用されている曲がなぜサロン音楽ばかりなのかとドイツの人から指摘されたことがあったとか。それで最近は描写音楽に関しても、《森の水車》や《かっこうワルツ》といった「サロン音楽」が避けられているのかもしれません(まあ、古めかしいということもあるでしょうし、いまさらポピュラー音楽を避けるという時代でもないでしょうし…。避ける必要がそもそもあったのか、という素朴な疑問もあり…)。

その関連で、もう一つ気になっているのは《国際急行列車》です。AIさんによると作曲者ブーエはBouëxという風に綴るらしいのですが(本当?)、そのファースト・ネームを見たことがありません。もちろんどういう素性の人なのかも分かりませんし、これもサロン音楽なのか、どうか。曲名で調べてみると、現在でもいろんな現場で使われているようですが、これもいろんなオーケストレーションがありますね(=初演の形はどういうものか分からない…)。YouTubeで拾ってきた以下の音源のレコード、実は私も持っています。



[追記] ちなみに、アメリカやロシア(をはじめとしたヨーロッパ)で、アイレンベルクといえば《ペテルブルクの橇の旅》が有名らしいですね。




最後に森の水車などの描写音楽を集めたCDがありますので、リンクを貼っておきます。

2026年5月22日金曜日

東京都交響楽団 第1044回定期演奏会Bシリーズ (ジョン・アダムズ指揮) (感想メモ)

東京都交響楽団 第1044回定期演奏会Bシリーズ
2026年5月21日(木) 19:00開演/サントリーホール

[曲目]
ジョン・アダムズ:《ナイーヴ・アンド・センティメンタル・ミュージック(1999) [日本初演]
アイヴズ:答えのない質問**
ジョン・アダムズ:ハルモニウム(1980)*

[演奏]
指揮/ジョン・アダムズ
合唱/新国立劇場合唱団*
合唱指揮*・副指揮**/冨平恭平

ジョン・アダムズが2回目の都響との共演であるということは、既に都響向けのエッセイでも触れたところですが、本公演に関しては、いずれもなかなか実演に接することが少ない曲ばかりで、それ自体がとても貴重でした。《ナイーヴ・アンド・センティメンタル・ミュージック》は、そのタイトルとは裏腹に(ギターが入る辺りは若干センチメンタル???)重厚な3楽章の交響曲という趣がしました。正直ちょっと長いかなあとは思いましたが(予習不足であったということもありますが…)、ダイナミックな盛り上がりを伴った、構成力をも兼ね備えた大胆不敵な(そういう面では「ナイーヴ」ともいえるのかな?)作品かと思いました。これが日本初演ということですが、会場がこれほど湧き立つとは正直思っておらず、アダムズの人気と言うものを、恥ずかしながら初めて知った次第です。オルガン奏者が上手のコンソールから弾いていたのにしばらく気が付かず、どこからこのオルガンっぽい低音が?と思ってしまいました(苦笑)。

休憩を挟んで、アイヴズの《答えのない質問》では、合唱指揮者の冨平恭平さんを副指揮者とし、Pブロックにフルートなどの木管合奏が、客席左後方にトランペットを配置し、いわば空間音楽のような趣がありました。なかなかあの広いホールで時間差があるのでは、と思いつつ、アダムズはトランペット奏者にはあえてキューを送らずにやっていたので、それはそれで面白い音響空間が生まれたように思います。曲は名曲であり、改めての説明は必要かと思いますが、品の良い木管のおしゃべりが作品の、哲学っぽい趣を出していたのかもしれませんね。

《ハルモニウム》も生で聴く機会が少ないと言うこともあって、この公演の個人的ハイライトでした(実はこの曲の日本初演も東京都交響楽団だったのですね。1990年2月26日、オーチャードホール、大野和士指揮。合唱は東京混声合唱団)。なかなか縦の線を合わせるのが難しいのだな、後半へのスタミナの保持も大変だろうな、と思いつつ、生で聴くからこそわかる聞こえ方もあると思います。サントリーホールということもあって、合唱とオーケストラがほどよく音響が溶け合う具合といいますか。もうすこし予習しておけば、歌詞も聞き取れたのかもしれません。ただ響き自体の美しさというのは、初期の方が味わえるのかも、と思ったりします。

しかし、アダムズって、若い人からも人気があるのでしょうね。P席を除いて9割の入り??? インターネットには「現代音楽でも聞きやすい」というコメントがちらほら。まだまだそういった「現代音楽」のステレオタイプと言いうのもあるのかな。

2026年5月10日日曜日

小林純一訳詞によるシューベルトの《魔王》

『日本の名歌 世界の名歌 シリーズ3:菩提樹』 原田茂生、芳野靖夫、鈴木寛一、田島好一、三上茂子、松本美和子、酒井美津子、大崎幸子、井崎洋子、高田作造、世良明芳 日本コロムビア GS-7127〜8 (2LPs)



日本語訳詞によるドイツとイタリアの歌曲を中心にまとめた2枚組LPレコードです。どうしてこれが欲しかったのかというと、小林純一の訳詞によるシューベルトの《魔王》が聴きたかったのです。「暗い森 走る馬」という出だし、私が中学校で聴いたのは、まさにこの訳詞のものでした。現在は「風の夜に馬を駆り」で始まる大木惇夫・伊藤武雄のものの方がポピュラーでしょうか。私も教材レコードは折りに触れていろいろ聴いていますが、圧倒的に大木・伊藤訳の録音が多い印象です。この訳でラジオ・ドラマ風に仕立てた音源というのもあって(確か日本コロムビア)、ちゃんとお父さん、子、魔王(エコーがかかっている)、ナレーション、効果音(馬が駆ける音、風の音など)も入ったもので、初めて聴いた時は爆笑してしまいましたが、何度も聴くとよくできているなあと思います。こういう教材レコードというのは、実は大人になって聴くと、レコード会社が、きちんとお金をかけて作っているんだなあと思います。むしろ大人になって聴いた方が勉強になるかもしれません。

訳詞についてですが、やはり一発で意味が分かるのは小林版で、大木・伊藤版は、おそらく格調が高い一方、分かりにくいというのも本音かな、とは思います。「綺麗なおべべがたんとある」「歌っておねんねもさしたげる」は、中学の頃は、正直、ちょっと恥ずかしかったです(この訳に愛着のある方、すいません!)。

さて私が中学生の時に聴いた小林版《魔王》の音源は、グラモフォン・エデュケーショナル・レーベルのセット物の1枚でした。おそらく『中学音楽』という教科書準拠かと思います。当時、音楽担当の舟竹先生からお借りしたのでした。先生からは《魔王》の他にもバッハ(なんとストコフスキーではなくてカイエ編曲版)(2026-05-23訂正:スコアで確認したらストコフスキー編曲でした)の小フーガト短調(三石精一指揮読売日本交響楽団)、そしてポピュラー編曲版の同曲(クラスに爆笑を巻き起こした演歌風アレンジ!)など、なかなか面白い音源がありました。このポピュラー版も、もう一度聴いてみたいなあ。「夜の酒場…」的なイントロ…。演奏者が分からないのが残念…。

上記写真のレコードに収録された《魔王》以外の外国曲の訳詞は文語調のものが圧倒的に多く、それはそういうものとして楽しく聴けています。また《楽に寄す》のようにオーケストラ伴奏の録音もあります。ピアノ伴奏による歌唱の録音は、ピアノ伴奏の音源についてはピアノが左寄り、歌い手はセンターよりやや右、という感じでしょうか。なお《魔王》の演奏は原田茂生(バリトン)、加納吾郎(ピアノ)です。

2026年5月5日火曜日

高橋アキ・プレイズ・フェルドマン@神奈川県立音楽堂 (感想メモ)

高橋アキ プレイズ フェルドマン
モートン・フェルドマン生誕100年を祝って
2026年5月2日、神奈川県立音楽堂 13:10開場、14:00開演
13:30 プレトーク 高橋アキ×柿沼敏江(音楽学)
 モートン・フェルドマン(1926-1987):
《ピアノ》
《トライアディック・メモリーズ》
《バニータ・マーカスのために》
《マリの宮殿》

とても有意義な4時間弱のコンサートでした。特に印象に残ったのは、《トライアディック・メモリーズ》(1981) です。最初に演奏された《ピアノ》(1977) よりも運動性があり、メリハリがあります。ピアニズムはもしかするとシューベルトに通じるところがあるのでしょうか。反復と楽想の切り替えの絶妙なバランス。丁寧で程よい加減。そして「最後はその音で終わってくれるといいんだが」という感じで終わってくれる、そんな完璧な作品と演奏でした。もちろん《ピアノ》の訥々とした流れにも魅了されてはおります。

正直なところ《バニータ・マーカスのために》(1955) に関していえば、僕と波長が合わないといいますか、きっと良い作品なのだと思いつつも、完全に没頭できないところがあります。狂気ともいえる反復(譜めくりの人も戸惑ってしまうような)が、逆に、おそらく凄みなどだろうけれど、もっと変化が早く訪れてくれることを期待しているのだろうと思ったりも。もちろん演奏に不満はないし、こういった作品がフェルドマン後期の醍醐味であると頭ではわかっていても、身体反応として受け付けないところがあったのも正直なところでした。ただそれも含めての貴重な体験だったことは間違いないです。しかし…例の弦楽四重奏曲第2番などは、修行のようなものに感じてしまうのでしょうか???

最後に演奏された1986年の《マリの宮殿》は、それに比較すると、自然にすっと入ってくる身近に感じられる作品。技巧的にも《バニータ・マーカス…》よりもやさしいということでですが、それでも大変なものだとは思います。

それにしてもフェルドマンと言うのは、先にも後にも彼に連なる存在がいない唯一の人であるということが改めて分かりました。高橋アキさんは、真剣にアンコールの作品を探していたそうだが見つからなかったとおっしゃってました。しかしほとんどの聴衆はこの4曲を聞いて十分に満足できたのではないでしょうか。歴史的コンサートになるという事前の触れ込みもありましたが、本当にその通りでした。同じ横浜市内でこういったコンサートが楽しめるのは、本当に嬉しいです。

会場には、現代音楽に強い親しみを持つ人が多かったのではないかと推測します。顔見知りの人も何人か見かけました。会場40分前くらいに音楽堂に到着しましたが、すでに列ができていました。

先に入った方は前の方から席を取られていたようでした。フェルドマン作品は弱音を多用するということで、一番前から座られていたのだとは思いますが、僕はもう少し後ろのほうに座りました。(確か10列目)。せっかく県立音楽堂なのですから、ホールの響きもともに味わいたいと思ったのでした。

終演18:00予定ということでしたが、10分ほど早く終わりました。




2026年5月4日月曜日

ヘレン・フォレスト+カーメン・ドラゴン楽団によるメドレー

archive.org をカーメン・ドラゴンで検索して出てきた音源ですが、ヘレン・フォレストの歌声がなかなか良いです。

HELEN FORREST WITH CARMEN DRAGON AND HIS ORCHESTRA (聴きやすい)

HELEN FORREST WITH CARMEN DRAGON AND HIS ORCHESTRA (雑音多し)
 

フォレストについては、以下に参考となる情報がありました。
歌と歌手にまつわる話 (229) ヘレン・フォレスト voice of the big bands

2026年5月3日日曜日

ソニー・ヴァレンティン (テノール)によるトスティ、ベッリーニ、スウェーデン歌曲集

Tosti, Bellini & Romances from Sweden. Sonny Wallentin, tenor; Rolf Lindblom, piano. Proprius PROP 9937 (LPレコード).

おそらく声楽を専攻していた大学学部時代、上京した際に購入した1枚ではないかと思います。石丸電気本店3階で購入かなと。トスティの歌曲目当てに買ったんじゃないかと思います。トスティといえば、カレーラスのCDもリリースされて買ったのですが、オーケストラ伴奏だったというのが(なぜか)残念だと思ってしまったりもします。

スウェーデンのテノール、ソニー・ワレンティンは、北欧音楽院に在学中の1981年5月、ストックホルムの郊外のウルリクスダル宮殿劇場コンフィデンセンにて、ベッリーニの《夢遊病の女》のエルヴィーノ役として鮮烈なデビューをしたようです。ライナーノーツによると「歓喜に沸く観客の拍手は止むことを知らず、批評家たちも同様に…称賛する筆を止めなかった」を留めなかったとのこと。音楽院を出てからは1983年、ストックホルムのフォーク・オペラでヴェルディの《エルナーニ》が上演された際、ワレンティンは主演として歌いました。再びライナーノーツから引用すると、夕刊紙『エクスプレッセン』のカミラ・ルンドベリは「イェムトランド出身のこの遅咲きのテノール歌手は、今やスカンディナヴィア随一の『イタリア系』テノールとして本格的に頭角を現している。その声は美しく豊かで流麗、何の制約も感じさせない…」と評価したそうです。

ただ、ワレンティン氏はいわゆる「遅咲き」の人で、エルナーニを歌った時はすでに34歳。声楽の道に専念したのは1979年になってからで、スウェーデン国鉄の機関車整備技術者としての職を休職した時だったといいます。

その後、1984年、ストックホルム歌劇場に新監督ラース・アフ・マルンボルグが就任した際、彼はワレンティンの名を知り、即座に彼を団員に迎え入れます。そしてシーズンの幕開けに、ソニーはケルビーニの《メデア》でジャゾン役を演じました。

この録音は、《エルナーニ》でメジャー・デビューを果たした直後の録音ということになりそうです。


2026年4月29日水曜日

小林正樹『日本の青春』(アマプラ)

アマゾン・プライム・ビデオ (有料)

武満徹が音楽を担当しているということもあって、小林正樹の『日本の青春』を一度観たいなあと思っていたら、なんとアマゾンのプライム・ビデオで観られるようになっていて驚きました。確かDVDにもなっていないのに…。

僕が観ようとした時点では★が1つというカスタマーレビュー(本文なし)があったのですが「それはないだろう」と思いました。結果、やっぱり観て良かったです。

タイトルの「青春」って、ああそっちにもかかっていたのか、というのが一つ、そして現在でも2つの青春が微妙に入り乱れるというか。映画評論なんかはできやしませんが、良い台本ですね(あ、まだそこでフラッシュバック使えるのね、的に)。そもそも「戦中派」がリアルな時代。狐狸庵先生の原作も読んでみなければ、と思いました。

2026年3月17日火曜日

神奈川フィルハーモニー管弦楽団 みなとみらいシリーズ、定期演奏会第412回 (感想メモ)

2026年3月14日 [土] 開演14:00、会場13:15
横浜みなとみらいホール大ホール
指揮者:小泉和裕(特別客演指揮者)
演目:ブラームス/交響曲第3番ヘ長調 Op. 90
   ドビュッシー/管弦楽のための3つの交響的素描《海》
コンサートマスター:石田泰尚

ブラームスはさぞかし渋くてずっしりした演奏かと思っていたのですが、心躍る、鳴りっぷりの良い演奏で楽しめました。長調・短調を揺れ動くモチーフは、微妙にその構成音を変えつつ展開し、ブラームスの作曲の妙技を素直に味わえます。その怒涛の流れを「苦難の道」とするのではなく、気持ちよく前進エネルギーとして捉え、それがほとばしる音楽といえるでしょうか。第一楽章の展開部はもちろんドラマティックですが、それも含めて、大きな音の構築物として設計されていることを演奏から感じ取ることができました。第二楽章も、一見「牧歌的」にさらっと通されているようですが、そこに、ひたむきな陰影があります。ベートーヴェンの第6交響曲的な「牧歌」というよりは、例えば弦楽の高域の響きの美しさもあり、ブラームスならではの管弦楽法の開拓をも聞きとるべきなのだろうな、と思いました。

第3楽章は、ホルン独奏が美しく、また旋律に酔わせる感覚ではなく、あどけない純朴さなのでしょうか。第4楽章は、次々とやってくる短い楽想の整理がうまく、第一楽章の主題回帰まで、やはり全体を見通した小泉さんの力量を堪能いたしました。

ドビュッシーの《海》については、やはりオーケストレーションの冴えを生で聴けて良かったと思いました(個人的にはコントラバスの質感やサスペンデッド・シンバルの絡み方などが興味深かったです)。もちろん、指揮者によって楽器間のバランスというのは考えているとは思いますが、楽譜そのものが要求してくる音の繊細な混ざり具合というものが、やはりいくら精密なデジタル録音やステレオ装置であっても捉えることができない部分ではないかと思います。そして全体として安心してフランス物を聞ける喜びというのも、やはり小泉さんだからこそ、といえるでしょう。改めて、スコアを振り返ってみたくなりました(学部の教養でアナリーゼをやりました)。

演奏前のプレトークでは、副指揮者の小林雄太さんが3月で「ご卒業」であることが告げられました。お疲れ様です。お話で面白かったのがブラームスの4つの交響曲の調性が c-D-F-eであり、これは(長調・短調の別を考えなければ、ということだと思いますが)モーツァルトの《ジュピター》交響曲第4楽章のモティーフに繋がっていること、ブラームスの交響曲第3番が演奏される機会が少なく、挑戦的な曲であること、またブラームス自身がそれぞれの楽章で、自身の作曲の色々な側面を提示していることが興味深かったです。《海》に関していえば、楽譜の表紙が北斎であり、ジャポニスムと関連していること、ドビュッシーが「印象派」という呼称を嫌っていた一方で、「交響的素描」も含めて、曲名は自ら考えたものであったことなどでしょうか。

2026年2月22日日曜日

ズデニェク・コシュラー/ロンドン響のチャイコフスキー:交響曲第4番

チャイコフスキー:交響曲第4番へ短調作品36 (20:45/10:40 4:53 9:55) 

Connoisseur Society Recording
Producer : E. Alan Silver 
Rec. Engineer: Marc Aubort
Philips (日本フォノグラム) X-7633 (CS-2047)
日本語解説:志鳥栄八郎

フェリスの図書館の山手分室にある国内盤レコードにズデニェク・コシュラー (レコードの表記はズデニェック・コシュラー) 指揮ロンドン響のチャイ4があったので借りて聴いてみました。不思議な魅力に溢れる素晴らしい演奏です。

以下のブログを拝見し、このレコードの音源がCD化されていないことが分かりました。ブログ記事は書かれている内容も面白く、とても参考になりました。

「チャイコフスキー 交響曲第4番 ~40年ぶりに聴くズデニェク・コシュラーの名演~」ハルくんの音楽日記

第1楽章の演奏時間はレコード・ジャケットの表記だと20:45です。テンポが遅いというのは言われてみればそうかと思いつつ、間延びしているという感覚はなく、すっと、そして味わいながら聴きました。第2楽章も、最初はしっとりと聴かせているなあと思っていたら、盛り上がりでぐっと持っていかれます。第4楽章の方は、ゆっくりしていることがもっと自覚できましたが、丁寧な鳴らせ方で好感が持てます。そしてチャイコフスキーに「静謐」という言葉は似合わさなそうですが、そう思わせる箇所さえあります。緩急取り混ぜて、攻めるところは攻め、そうでない箇所は「引きの美学」といいますか。

録音ですが、上記ブログでは「恐らくアナログ音源のデジタル化の問題でなのでしょうが、音が薄く安っぽい」と書かれていました。レコードはそこまで薄い感じはしなかったです (もちろん聴くカートリッジにもよるとは思いますが)。全体的に自然体な音に聴こえますが、くぐもった感じはあるかもしれません。

2026年1月24日土曜日

CBSテレビ『The 60 Minutes』- ローリー・アンダーソン・インタビュー

Laurie Anderson: The 60 Minutes Interview


74歳のアンダーソンへのインタビュー。アートと音楽との自然なつながり、1966年に音楽と短編映画のキャリアのスタートしたこと、ヨーロッパにおける音楽活動、1975年にイタリアにおけるヴァイオリンとループの演奏をしたこと、《オー! スーパーマン》のヒットから「前衛」がMTVへ進出したこと、ルー・リードとの出会い、近年の創作活動など。

全盛期?の映像(日本でもレーザーディスクで発売されていたもの)と比較して彼女見ると、「年取ったなあ」というのが正直な感想ではありますが、以前旺盛な創作意欲はすごいですね。ファシズムの台頭に危惧を呈しつつ、「私は世界をより良い場所にするアーティストではありません。それは私の目標ではありません。ただ密かには、と思っています」というメッセージが印象に残りました。

2026年1月11日日曜日

ヌスラット・ファテ・アリ・ハーン@ボストン・シンフォニー・ホール (1993) の思い出

 富山の書庫にあった、ボストン時代のプログラムを取り出してみました。

ヌスラット・ファテ・アリ・ハーンは、ビクターのビデオ『世界民族音楽大系』で観て感動したんだと思います(学芸大の図書館にありました。でもOCORAのCDでも聴いたはず。NHK衛星放送でも彼のライブをやっていた記憶が…中村とうよう氏の司会の番組)。それで、生で聴けると分かってチケットを取りました。

演奏が始まる前にステージに登らないようにとアナウンスがあったり、警察官が(1人)舞台袖で待機していたりで、物々しい感じでした。実際聴衆の中に、ちょっとしたエクスタシーになって、舞台に上がる人が出てきたように記憶しております(2〜3人はいたような)。その度に警察官が対応していました。

また、シンフォニー・ホールのバルコニー席が足踏みでズシズシ振動して「ホール、壊れないよね」と不安になるレベルでした。もちろん歌ってる内容は分からないのですが、こちらもノリノリで楽しみました。隣にいた女性から「歌詞が分かるの?」と聴かれましたが、「分かりません。ですが、感じるものがありました」と答えました。それに対する反応はなく、不審に思われたのか何なのか分からずじまいです(汗)。しかし、普段のクラシックのコンサートとは全く違う雰囲気で、面白かったです。

チケットの価格は$35, $27, $22でした。ケチケチせずに$35のを買えば良かったかなあ。

改めてプログラムを覗いてみたら、カッワーリの解説、ヌスラットのインタビュー、歌詞の英訳など、資料的価値はありそう(とてもコンサートの最中にプログラムの英訳を追う雰囲気ではありませんでしたが…)。全米カナダツアーの一環だったようですね。

その後、タラハシーでヌスラットをフィーチャーしたラジオ番組があって、ちょうどWorld Music Culturesという授業でカッワーリを題材にレポートを書いていた手前、再放送をお願いしたことがありました。どこかに録音が残っているはずです。

2026年1月10日土曜日

グローフェ:《グランド・キャニオン組曲》(コステラネッツ)

モノラル録音ということもあってか、CDとしては発売されていないアンドレ・コステラネッツ楽団の《グランドキャニオン組曲》の録音です。なぜか《ミシシッピー組曲》はバーンスタインの《グランドキャニオン…》とカップリングされてリリースされていたことはあります。

コステラネッツの演奏にはグローフェのオリジナルのオーケストレーションを尊重している箇所があります。例えば<山道を行く>の約2分40秒位のあたり、通常版ではホルンで演奏されるメインテーマが、ここではオリジナルの通りのミュートのトランペットで演奏されています。

効果音やジョニー・キャッシュのナレーション入の録音もありました。archive.orgには一応録音がアップロードされています。LPをそのままアップロードしたもので、音が濁っている箇所があるのが残念。針の掃除、したのでしょうか? あるいはレコードの溝自体が傷んでいるのかな?

2025年12月15日月曜日

アメリカ音楽メモ (2005-11〜2005-12)

Morton Feldman. Something Wild: Music for Film. Ensemble Recherche. Kairos 0012292KAI.

ウェーベルンが作曲に影響を及ぼしたと言う点では、バビット以下のアカデミズムとモートンフェルドマンの間には、確かに共通点がある。しかし、アカデミズム派がウェーベルンの楽譜上にある音のコントロール法を見たのに対し、フェルドマンは、そのものの感覚に惹かれたようだ。トラック1 Something Wild in the City: Mary Ann's Theme (1960) も聴きやすい。トラック9Samo (1968) はコープランド風のトランペット・ソロ。フェルドマンが嫌いな人でも大丈夫かもしれない。

展開スパンが短い。音色が次々と変わる。センスの良さは変わらない。(2005-11-03)

アラン・ホヴァネス:交響曲第4番 Op. 165. A. クライド・ローラー指揮イーストマン・ウインド・アンサンブル PHCP-10062 (日本フォノグラム)

第1楽章はコラールが全編にわたって美しく響き渡る作品。ホヴァネス特有の、ややもすると、居心地の悪いアジア臭さが少ない音楽。第2楽章は、吹奏楽といえど、マリンバからスタート。打楽器中心。

テリー・ライリー@金沢21世紀美術館 2005-11

テリー・ライリーの音楽は急速に頭の中から消えていった。どんな音楽であったのか全く記憶にない。例えば、モダンジャズ風の和星、コード進行が角になっていたかと思う。《In C》のテリーナーから今日のコンサートを想像するのは不可能だし、この曲でなくても、《曲がった空気の虹》でも《シリ・キャメル》でもなく、おそらく最近自主レーベルから出されたアルバムにてようやく参照点が見つかるような気がする。

ただ、反復する音型がミニマリズムを特徴付けているだろう事は確かに確認できた。しかし…。革命的な音楽、あるいは新しい音楽といった賛辞はふさわしくないだろう。

開かれた形式 (2005-12-09)

音の解放はケージの範疇。形式と言うパラメーターを演奏家に委ねる方法論。毎回違う形式になる。

バビットについて (2005-12-09)

ミルトン・バビットがアメリカの作曲家に及ぼした影響を考える時、常に彼が大学で作曲を教えていたことに言及される。アカデミーズム派と言うのは、実験音楽とは違うが、調整音楽でもない。ヨーロッパ流のセリエリズムの延長線上にある作曲技法を大学を中心に受け継いだ作曲技法と言えるのだろうか?

2025年12月13日土曜日

東京交響楽団第737回 定期演奏会 (サントリーホール) (感想メモ)

<出演>
指揮:ロス・ジェイミー・コリンズ
ヴァイオリン:大谷康子

<曲目>
≪大谷康子 デビュー50周年記念≫
マルサリス:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調
コープランド:交響曲 第3番

東京交響楽団公式サイト

今日はコープランド3番の楽曲解説を書いた東京交響楽団の定期に行ってまいりました。残念ながら会場に遅れて到着したため、マルサリス作品はモニター越しに聴きました。生で聴けなくて残念。スーザフォンが入っているのを見るとどうしてもポール・ホワイトマン楽団を思い出してしまうのですが、おそらく曲はもっとシリアス寄りなのかな。周りの聴衆の反応は「マルサリスがこんな曲を、天才だね」から、「ちょっと音楽がしっとりとしすぎではないか」まで様々。手拍子・足踏み、スタンディング・プレイまであったっぽい。

コープランドは、馬力のいる派手な曲というイメージがどうしてもあったのですが、今日の演奏は、しっかりと鳴らしつつも暴発的な感じはなく、芯のしっかりした響きで満たされる路線というべきでしょうか。弦・木管の美しさに自然に注目するようリードされていた印象。24歳? 今後が楽しみな指揮者、というべきでしょうか。

2025年12月10日水曜日

龍角散presents ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 来日公演 (2025/11/20 みなとみらいホール) (感想メモ)

<演奏曲目>
ヤナーチェク:ラシュスコ舞曲
バルトーク:《中国の不思議な役人》組曲
ストラヴィンスキー:バレエ音楽《ペトルーシュカ》(1947年改訂版)

<演奏>
キリル・ペトレンコ指揮ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

<日時・場所>
2025年 11月20日(木)19:00開演(18:15開場)
横浜みなとみらいホール

とあるご縁で、ベルリン・フィルの公演に接する機会を得たので、聴きにいってきました。私の他にもフェリスの教職員や学生の姿も見えました。サントリー・ホールはロマン派・プロだったようですが、個人的には、この20世紀プロの方に魅力を感じた次第です。

ヤナーチェクは、軽妙な舞曲はより軽妙に、という感覚でしょうか。オルガンが入りますが、重厚な路線ではなく、楽しみを付加する方向性。組曲路線で、ややつかみどころに困るところで、この曲は予習しておけばよかったです。演奏会用舞曲で実用的な作品ではないというところもあり、柔軟なテンポの変化を随所に交えつつ、踊りの楽しみが終始溢れていました。

バルトークはこれまた解像度の高い演奏でした。随所に現われる独奏フレーズは、各自妙技を生かしつつ、彼らのオーケストラの中での役割・文脈も明確でした。意外にも、というと変かもしれませんが、「引き算」なアンサンブルではなかったでしょうか。精緻であるからこそ、効率よく鳴り響く感覚といいますか。それでも混沌とした終曲には興奮させられました。

《ペトルーシュカ》は、冒頭の、音符通りのズレの感覚からとても効率よくとてもきれいでした。ミスがなかったとはいえませんが、各奏者の安定した技術はさすがにベルリン・フィルといったところでしょうか。この曲はロシア・オケでないといけない演目ではむしろなく、細やかなアンサンブルと全体による動きとが素早く移り変わる作品なので、このオーケストラの特色が生きてくるのでしょう。エコノミカルなスコアリングなので振り付けがないと分かりにくいというところもあるかもしれないのですが、やはりファンタジーが楽しいモダンな組曲であるということを充分堪能できたように思いました。

演奏会後、指揮者ペトレンコに対する長いカーテンコールが続き、すでに普段着に着替えてしまった彼が最終的に登場し、ホールに残っていた聴衆たちを喜ばせていました。

2025年12月9日火曜日

ホヴァネス:交響曲第29番 (バリトン・ホルンと管弦楽のための) 作品289 (1976) (チャールズ・スミス、スクロヴァチェフスキ指揮ミネソタ管)

Alan Hovhaness:  Symphony No. 29 for Baritone Horn & Orchestra, Op. 289. Minnesota Orchestra;  Stanislaw Skrowaczewski, conductor (World Premiere, September 1976).

編成:Orch: 3222 4331 timp perc(4) hp strings


YouTubeのコメントを自動翻訳にかけてみます。
アメリカの作曲家アラン・ホヴァネス(1911-2000)は極めて多作で、500曲以上の作品を残した。番号付きの交響曲は67曲に及び、そのうち30曲以上が商業録音されている。

第29番交響曲は吹奏楽版の第2版が録音されている。その録音ではバリトンホルンではなくトロンボーンが使用されている(いずれも差し支えない)。ここに初演となる第1版(フルオーケストラ編成)の世界初公開録音を紹介する。1976年9月、ヘンリー・チャールズ・スミス(バリトンホルン)とスタニスワフ・スクロヴァチェフスキ指揮ミネソタ管弦楽団による演奏である。

個人的には、このYouTubeコメントに言及されている「第2版」はトロンボーンよりもユーフォニアムで録音しても良かったのでは、と思ったのですが、音色の違いからの選択だったのでしょうか? フレージングはやっぱり滑らかな方がホヴァネスらしいような気もします。

いずれにせよ、珍しい独奏楽器の入った交響曲だとは思います。


2025年12月7日日曜日

アルフレッド・リード:《ロシアのクリスマス音楽》(演奏者不明音源)

Reed - Russian Christmas Music. Unknown Performer. Recorded under the direction of Ralph Satz. A Sam Fox Production 7-33-15-A. (モノラル録音、7インチ)




Webマガジン「ONTOMO」アルフレッド・リードの記事を書いていた時、興味本位でいろんな音源を探しているうちに出会った7インチ盤です。「プロモーション・レコード」というのがどういう目的で、どのように使われるのか分かっていないのですが(ちょっと調べてみたら、楽譜出版社が出していたものらしい)、とにかく録音されているのは、アルフレッド・リードの《ロシアのクリスマス音楽》ということはレーベルに書いてあり、実際聴いてみると、確かに初期のリードが書いた、この吹奏楽の一大傑作であることは間違いないです。

ただ、ラルフ・ザッツの監修の下に録音されたとはいえ、肝心の吹奏楽団や指揮者が書いてないのが気になります。Sam Foxの7インチ盤というと、別のものにはフレデリック・フェネル指揮マイアミ大学ウインド・アンサンブル、アルフレッド・リード(プロデューサー)によるクリフトン・ウィリアムズによる交響的舞曲第3番《フィエスタ》というのもあります(こちらにもお持ちの方がいらっしゃいました…)。希望的観測では、作曲者リード指揮のマイアミ大学ウインド・アンサンブルなのかな、と思ってしまうのですが、いかがでしょうか? 演奏が佼成の録音と似ているようなテンポや運び方のような気がするんですよね…。あるいはやっぱりフェネルなのか?????

ただこの録音、15分あまりの大曲を2つの面に分けているということもあり、途中で演奏が切れています。デジタル化するとき、何となくつなげてみたのですが、どこか欠けた一瞬がないかどうか、とても気になります。聴いた感じは全然分からないのですが…。

2025年12月6日土曜日

神奈川フィルハーモニー管弦楽団 第409回定期演奏会(感想メモ)

演奏曲目
ラヴェル《道化師の朝の歌》
バーンスタイン/《キャンディード》組曲
バーンスタイン/管弦楽のためのディヴェルティメント
ストラヴィンスキー/バレエ音楽《春の祭典》
 2025/11/15 14:00開演、みなとみらいホール

久しぶりに神奈フィルの定期に行ってきました。演目がとても興味を引いたのと、指揮者が大植英次さんであるところが、私的なポイントでしたでしょうか。

まずラヴェルの《道化師の朝の歌》は、粒の揃ったピチカートからまとまったアンサンブルが聴けました。派手さで聴き手にアピールするのではなく、小粋なエキゾチシズムをじっくりと堪能できました。

バーンスタインの組曲《キャンディード》は、メドレー風で、幾分ノスタルジックな趣がします。演奏も、ふっくりとしたバーンスタインといいますか、歌心溢れるオーケストラといいますか。

同じくバーンスタインの《ディヴェルティメント》は、打って変わって、元気よく歯切れの良いリズムで、サクサクした感覚です。雑多なポピュラー風味をまぶした、多楽章のオケージョナル・ピースですね。最終楽章ではピッコロや金管の立奏があり、スーザの《星条旗よ永遠なれ》を思い出しました。全体としては、それでもビシっと鳴るだけではない、プラス・アルファを感じることができた好演だったのではないでしょうか。

メインの《春の祭典》も、最初のラヴェル同様、落ち着いた感じで聴けましたが、ところどころ、スコアを確認したくなる箇所があって、面白かったです(音の間違いとかではなく、そういう解釈が可能なのか、という面白さの発見ということでしょうか)。ただ、それよりもびっくりしたのは、最後の音が鳴り響いてから。いわゆるフライング・ブラボーがなくてよかったのですが、余韻を味わうあの瞬間、自分の胸がすごくドキドキしていて、息苦しいくらいでもあったのです。それだけクライマックスを楽しみながら、心拍数が上がっていたのかもしれません。終結部の美しいティンパニーとグランカッサの迫力の合わせ技にやられたのかな?