2025年2月15日土曜日

アルバム『弦楽四重奏のメロディー』 (アメリカン・アート四重奏団)

String Quartet Melodies. American Art Quartet RCA Victor (Bluerbird Classics) LBC-1086 (Mono, LP)



幸松肇氏の『世界の弦楽四重奏団とそのレコード』第1巻 アメリカ編によれば、アメリカン・アート四重奏団は第二次世界大戦中の、1940年代のSP期からLP期にかけて、「アメリカの黎明期」に結成されたアンサンブルだそうだ。西海岸を中心に活躍した実力派といったところなのか、「西海岸=ハリウッド=メロメロ路線」ということではなく、ヴィルトゥオーゾ的な感覚が一方に、上品なリリシズムが一方にというところか。録音の古さゆえに、低音がもっと欲しいところもあるが、聴きき慣れると何とかなるような気がする。

このアルバムの音源自体は、ソロ演奏家としても活躍した第1ヴァイオリン奏者にちなんだ『アート・オヴ・ユーディス・シャピロ』 (→タワーレコード、 →Spotify) というBiddulphのコレクションに今は収録されている(シャピロについては青弓社のサイトを参照→第14回 ユーディス・シャピロ (Eudice Shapiro、1914-2007、アメリカ))。ただし、オリジナル・アルバムでは、このCDの4トラック目 (メンデルスゾーン:スケルツォ - 弦楽四重奏曲 第4番 ホ短調より)と5トラック目 (チャイコフスキー:《アンダンテ・カンタービレ》) は曲順が入れ替わっている。

2025年2月13日木曜日

マイケル・コルグラス:《コンサート・マスターズ Concertmasters》(秋山和慶指揮アメリカ交響楽団)

Robert Rudié, Red Violin; Masako Yanagita, Yellow Violin; Ronald Oakland, Blue Violin American Symphony Orchestra; Kazuyoshi Akiyama, Conductor. Turnabout TV 34704 (LP)

Spotify

先日秋山和慶さんがご逝去されたということで、あまり知られていない秋山さんの録音として、これを取りだしてみました。

マイケル・コルグラスはイリノイ大学卒業後、ウォーリングフォード・リーガーとダリウス・ミヨーに師事。生前は打楽器奏者・指揮者としても活躍し、しばしばアメリカ国内のアンサンブルにゲスト・アーティストとして出演していました。

3つのソロ・ヴァイオリンのための《コンサート・マスターズ》はデトロイト交響楽団が初演した作品で、このレコードでは、1962年、当時80歳だったレオポルド・ストコフスキーによって創設されたアメリカ交響楽団の3人の首席団員(ロバート・ルディエ、マサコ・ヤナギダ、ロナルド・オークランド)が独奏をつとめています。3人は1977年4月17日のカーネギー・ホールでの、初演に続く2度目の公開演奏でも独奏をしているそうです(オーケストラもこのレコードで演奏をしているアメリカ交響楽団です)。

レコードのライナーノートによると、この曲は「ロマンティックな印象主義的、ポスト・ウェーベルン的な作品」で、「作曲者のヴィヴァルディへの憧れと、セリエル技法への憧れが結びついた結果」「18世紀、ロマン派、印象派、ポスト・ヴェーベルンなど、従来の技法と不協和音の技法」を融合しているのだとか。そして「軽やかで叙情的なムードを生み出し」、様々な音楽様式を統合しているとあります。

ただ個人的には、あまりウェーベルンという感じはしていないように思いました。フレージングはとても古典的ですし(ヴィヴァルディの影響だから、ネオ・バロックということになるのかな?)、アメリカの真面目な無調音楽という感じがしました。

ところで、独奏者については、通常の「第1、第2、第3ヴァイオリン」という用語をコルグラスは意識的に避けており、赤、黄、青という色を用いています。その理由について、作曲者自身の言葉をライナーノートから引用します。

ソリストの名前をどうするかというくすぐったい問題が出てきた。ヴィヴァルディは自分自身と生徒のために書いていたので、I、Il、IlIと指定することができたが、誰が名ヴァイオリニストに2番、いや3番を弾けと言うだろうか?そこで解決策として、ソリストに赤、黄、青(指揮者に近い赤)の名前をつけることにした。これで、好きな色をめぐって論争が起こることだろう!作曲家の苦悩は終わらない。

2025年2月11日火曜日

ボストン・ポップス・ポピュラー・コンサート (フィードラー/ボストン・ポップス)

 『ボストン・ポップス・ポピュラー・コンサート』フィードラー指揮ボストン・ポップス・オーケストラ ドイツ・グラモフォン (ユニバーサル・ミュージック)  UCCG-9358

1970年〜73年の録音。バート・バカックの《雨にぬれても》 (1969年の映画)《サン・ホセへの道》 (1968年、ディヴォンヌ・ワーウィックが歌って大ヒット) の品の良いアレンジ(残念ながら編曲者の名前がCDには明記されてい ないが、元LP (ポリドール・レーベル) のジャケットを見てみたら、どうやらリチャード・ヘイマンらしい)。

内容はムード音楽より、ややハイブロウな感じ。聴いた感じではスタジオ録音ではなく、ボストン・シンフォニー・ホールの豊かな反響も入っているようではある(未確認)。そして音が立っていて、歯切れがよい。ジョン・ウィリアムズ時代にくらべると、やや細身かもしれないけれど。

ラグタイム・ナンバー、フォックストロット、デイキミーランド・ジャズ、録音された頃のヒット・チェーン… もちろん「本物」ではないかもしれないが、 これらをまとめてそれなりに楽しく味わうには良い。

演奏は、なかなかのハイ・テンション。でもフィードラーは 淡々と4拍子で振 ってそうなので、面白い。

クラシックを本業とするミュージシャンがポピュラー・チューンに挑戦しているといえるのだろうが、それがマイナスになっているようには思えない。

【トラック内容】
1. 雨にぬれても
2. 恋よさようなら
3. サン・ホセへの道
4. サウンド・オブ・サイレンス
5. 明日に架ける橋
6. イージー・ウィナーズ
7. シュガー・ケーン・ラグ
8. 12番街のラグ
9. ダークタウン・ストラッターズ・ボール
10. タイガー・ラグ
11. 昼も夜も
12. ミュージカル《ラ・マンチャの男》メドレー (ドゥルシネア / アルドンサ / マンブリーノの金の兜 / 彼のことしか考えず / 哀れな騎士 / いとしのドゥルシネアへ / 見果てぬ夢)
13. ミュージカル《ヘアー》メドレー( アクエリアス / ドナ / フランク・ミルズ / イニシャルス / エイント・ゴット・ノー / ヘアー / バレ・クリシュナ / エアー / グッド・モーニング・スターシャイン / レット・ザ・サンシャイン・イン) (2004.6.14記述、2025-02-11補筆)

2025年2月2日日曜日

ゴードン・ムンマ 電子音楽作品リスニング・メモ (2004.9.16)

Gordon Mumma "Live-Electronic Music" Zadik TZ7074

《ホーンパイプ (角笛) Hornpipe》(1967) ゴードン・ムンマ (狩猟ホルン、ホルン、サイバーソニックス) Track 3
アマゾン

ナイマンの著作によるとムンマのcybersonic devices使用の作品としてはHornpipe (1967) が最も有名なんだそうだ (Nyman, 101)。

例えばこの曲がフィードバックを使用しているということを知らなければ、ホルンや角笛といった太古、原始を思わせる響きと沈黙に思いを馳せながら、想像力を働かせて聴く行為になるのだろう。一方、一度コンソールの中に入り音楽が変化させられると、リード楽器のような音になる。ゾーンのClassical Strategiesを思い出す。明らかにヒスノイズが聞こえてくる箇所はテープなのか?

「演奏場所の中でのホルンの音の反響をモニターし、自らその反響を補足するように調整する。この調整作業の間、ある回路が不均衡になり、自分の均衡を保とうとする。そして、その過程で、さまざまな組み合わせが生じ、それが純粋に電子的な反応を引き起こす。」(ナイマン、195-196)

《Mesa メザ》 (1966)デヴィッド・テュードア(バンドネオン)、ゴードン・ムンマ(サイバーソニックス)Track 2

冒頭からバンドネオンの音など全く思い起こすことのない、歪んだ電子音的な響き。《ホーンパイプ》と違うのは、長い音が引き伸ばされること。サイバーソニックスに、どれだけ「結果としての音」をコントロールする能力があるのか、という疑問を持った。ナイマンの『実験音楽』によるると、単なる増幅装置ではなく、gate-controlled circuit とコンサート・ホールの音響によって左右される (Nyman, 102) というし。ムンマのシステムを知る必要が出てくるだろう。 (2004.9.16執筆)

スーザ・マーチ集 (ジョニー・グリーン指揮ハリウッド・ボウル・ポップス管弦楽団)

スーザ・マーチ集 (星条旗よ永遠なれ、ワシントン・ポスト・マーチ、サンダラー・マーチ、エル・キャピタン・マーチ) ジョニー・グリーン指揮ハリウッド・ボウル・ポップス管弦楽団 テイチク (Decca) DEP-58


Discogsのデータはアメリカ盤(6曲入り10インチ33 1/3回転盤だ!)。私が持っているのはテイチク発売の国内盤 (45回転EP盤)。これをなぜ買ったのかと言うと、おそらく演奏がハリウッド・ボウルの名が付いたオーケストラによるものだったからだろう。ポップス・オーケストラの資料として買ったのだ。ライナーには「今や、アメリカ楽壇に、嘖々(谷口注:さくさく)たる名声を馳せているジョニー・グリーンが、わが国でもFENを通して、お別染のハリウッド・ボウル・"ポップス" オーケストラ(Hollywood Bowl "Pops" Orchestra)を率いて、初めでデッカ・レコードにお目見得しました」と紹介されている。演奏は、まあ悪くはないのだけれど(弦楽器が入るのは許そう)、トリオ部分にいつもベルリラの音が入ってきて、それが個人的には耳障りというか…好みに合わないのである。米Deccaの録音も、ちょっと音が遠く、高音がシャリシャリな感じで、こちらも好みではないかもしれない(もしかするとオリジナルはSPと同時に発売されているような時代かも)。

というわけで、この音源は純粋に資料として保持している1枚なのだろう。懐かしくこの1枚を思い出される方には申し訳ないのだが…。

アメリカ音楽 リスニング・メモ (2004年9月)

ケネス・ゲイブロー:《レモンのしずく》《ハリーのために》 アルバム『電子音楽のパイオニア』CRI SD 356
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このアルバムは1950年代から60年代始めにSon NovaとHeliodorからリリースされていた音楽を集めたものだそうだ。案外こういうジャンルの方がアカデミズムを感じないものだ。

この世のものとも思えない音たち。アメリカは具体音路線と電子音楽路線の区別なく…と言うのが典型的な歴史的記述だが、前者は確かにそうだろうと思う。後者は電気的手段による音響合成が主である。(2004.9.12)

アール・ブラウン:《4つのシステム》エバーハード・ブルム (フルート) Hat Art CD 6147

沈黙が多く、ケージを思わせるが、その後に現れる音が強いダイナミクスであったり、すごく細かい音符であったりで、まさに「アクション」を思い起こさせるのが強烈である。(2004.9.13)

ヘルベルト・ブリュン:11のためのジェスチャー (1964) ヘルベルト・ブリュン指揮イリノイ室内合奏団 (Chamber Players) CRI SD 321 YouTube

明らかにセリエリズムまたはアカデミズムの流れを組んでいるが、どこかしらジャズの影響らしきユーモアも感じられる。(2004.9.13)

チャールズ・ドッジ:《イン・セレブレーション》(1975)、《スピーチ・ソング》(1973)、《私たち人生の物語》CRI SD 348YouTube

ヴォコーダーのテストみたいにも聞こえるのだけれども、後にもっとポピュラー音楽に使われたときのことを考えると、なんとも実験的だ。現代音楽モード、あるいはアカデミズムのはずだけど、やはり、どことなくユーモラス。曲を追って聴く時間があれば楽しめるのかも。(2004.9.13)

ロジャー・レイノルズ:《Ping》(1968)、《Traces》(1969) CRI SD 285

突然大きな音が出てびっくり (Ping)。(2004.9.13)

ジョージ・クラム:《歌、ドローン、そして死のリフレイン》ローレンス・ウェラー (バリトン)、ジョール・ソーメ指揮フィラデルフィア・コンポーザーズ・フォーラム Desto DC 7155

歌詞がわからないのだが、思わせぶりなコメントと、アンプリファイされた楽器の音が、大きな音のする打楽器と合っている。エレキが入っているが、ポピュラー音楽くさくない。(2004.9.13)