2025年9月16日火曜日

オルガンとその仲間たち【フェリスホール・オルガンコンサート】(2025/9/15)

[日時]
2025年9月15日(月・祝)14時00分開演(13時30分開場)

[場所]
フェリスホール

[出演]
アコーディオン・笙/早川幸子
パイプオルガン/三浦はつみ
パイプオルガン・リードオルガン/宇内千晴

[曲目]
N. ブルーンス:前奏曲とフーガ 第1番 ホ短調 《グレート》
パイプオルガン/宇内千晴

W. B.ブラッドベリー:飼い主わが主よ(讃美歌)
リードオルガン/宇内千晴

H.ジロー:パリの空の下
アコーディオン/早川幸子

菅野よう子(坂本日菜 編曲):花は咲く ―ソプラノとベビーオルガンのための―
E.エルガー:行進曲 《威風堂々》 第1番 ニ長調
リードオルガン/宇内千晴、アコーディオン/早川幸子

雅楽古典曲 《黄鐘調調子》 《越天楽》
笙/早川幸子

アメイジング・グレイス
笙/早川幸子、パイプオルガン/三浦はつみ

W. B.ブラッドベリー:主われを愛す(讃美歌)
リードオルガン/宇内千晴

W. ボルコム:ゴスペル・プレリュード 「主、われを愛す」
J. S. バッハ:ピエスドルグ ト長調 BWV 572
パイプオルガン/三浦はつみ

今年のフェリスホール・オルガンコンサートは、これまではちょっと違う方向性を示していた。すなわちオルガンを出発点としつつも、オルガンと構造的に共通点がある楽器を一同に介して楽しむ企画といえるだろうか。例えば空気を送りこむ点と鍵盤がトリガーになっている点はオルガンと似ているけれども音を出す機構に違いがあるリードオルガン、そしてそこからさらに発展させて、アコーディオンや笙も舞台に乗せるというもの。作品も様々で、北ドイツオルガン楽派のブルーンスからシャンソン、東日本大震災の復興ソング、雅楽、讃美歌、そして最後にバッハのオルガン作品など、既存の「クラシック」に囚われない楽しい内容だった。

宇内先生によるブルーンス作品の後、三浦先生が「かっこうオルガン」という2つの音のみが出せる、ふいごと鍵盤のみに特化したモデルみたいなものを使って、オルガンの音がでる原理を分かりやすく解説されていた(演奏会室の長澤さんが小さなカメラを使って楽器にズームアップし、その映像をステージ奥のスクリーンに投影するというグッドアイディア!)。一応文献の上で、文字の上では楽器のことはわかっていても、実際に簡素ながらも音の出る仕組みがとても分かりやすかった。

リードオルガンの場合も、実際に使われているリードそのものを宇内先生が提示され、金属リードがとても小さいということもわかったし、実はリードオルガンの場合は、息を吸ったときに音が出ると言うことも初めて分かった。アコーディオンの場合の左手の様々なボタンと言うものを、どうやって手探りの状態で探すのかということであったが、ボタンのいくつかは見えなくても印がついているものがあったり、少々凹んでいたり(?)というのが面白かった。とはいえ左手は結構難しそうで、曲の途中に転調がある曲などは正しい調にさっと移動するのが難しそうだなと思った。

笙とオルガンの合奏は特に面白く、曲も《アメイジング・グレイス》であり、これはバグパイプでも演奏する曲だと思うのだけれども、三浦先生がオルガンの、バグパイプっぽくなるストップを使われていて、それがとても面白かったのと、笙とオルガンとの両者の音量についても絶妙なバランスだった。また笙が醸し出す和音と西洋由来のオルガンが生み出す和声のあり方が微妙に違っていのが、かえって興味深く、不思議な合奏に見えたのが、とても印象的だった。

コンサートは終始和やかな雰囲気で、多くのお客さんが来られていた。個人的には私の後ろの列の方が演奏中にお話を始めていたのが、やや残念。楽しいコンサートであるのでリラックスされているのだろうが、やはり話し声は演奏を楽しみたい人には気になるだろう。視線をこの方たちに向けている人もいらっしゃった。

なお、昨年度に引き続き、今年のオルガンコンサートも、私がプログラム・ノートを執筆した。昨年の「オルガンコンサート」はリストのオルガン作品を核としてピアノ曲も含めた重厚な内容でとても勉強になった。演奏をされた三浦先生や宇内先生からそのプログラム・ノートの内容を評価いただき恐縮至極であるが、本年度も書かせていただくことになった。しかも今回は企画内容を尊重し、演奏曲目そのものよりも楽器に重点を内容をご希望いただいた。そのおかげで、リード・オルガンやアコーディオン、笙の楽器構造や歴史について、おおいに勉強になった。また早川先生には執筆のための参考資料もご提供いただき、感謝申し上げたい。



ちなみに今日の午前中は、研究室で仕事用の書類を探していた。アメリカ音楽を扱いながらも、どうしても音楽以外の書籍に手を出さざるを得なくなり、ちょうど探していたテーマに即した、アメリカ思想史(文化史)の関係の本がうまく見つかってとても良かった。ただこれを今後もう少し読み込んでいかないといけないとも思うので、そこは大変かもしれない。


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