2025年9月27日土曜日

Mostly Classic モーストリー・クラシックにラヴェルの記事を書きました。

『モーストリー・クラシック』2025年11月号に、ラヴェルのアメリカ滞在について書きました。どうぞよろしくお願いいたします。



 

2025年9月22日月曜日

ラルフ・ハンター合唱団:ワイルド・ワイルド・ウエスト

The Wild Wild West. The Ralph Hunter Choir. RCA Victor LSP-1968.

フロリダに住んでいたころ、地元の公立図書館のショップの片隅に誰が持ち込んだか分からないレコードが売られておりまして、そのうちの1枚として、1ドルもしない値段でこれを買ったと記憶しています。カントリー風の楽しそうなカウボーイ・ソング集といっていいのかな? オーセンティックなものじゃなくて、テレビの西部劇っぽいスタイルで録音されたものだと考えているのですが、どうなんでしょう。冒頭に効果音なんかも入ってて、なかなか賑やかです。

どちらかというと、ジャケット買いの一枚。一応RCA Living Stereoってところがいいですね。
もうCDにはなっているようなので、そちらもいつかは買ってみたいところです。




2025年9月21日日曜日

ハリス:交響曲第3番 (オーマンディ/フィラデルフィア管弦楽団)

Roy Harris: Symphony No. 3 (c/w Charles Ives: Three Places in New England [First Recording of Original Full Orchestration]) RCA Red Seal ARL1 1682 (LPレコード)


オーマンディのハリスはモスクワのライブがありますが、モノラル録音です。それに対して、このRCA盤はステレオです。このレコードが発売された1976年の時点では、すでにアイヴズの方が知名度が高かったということになるのかもしれませんが、それでもオーマンディとフィラデルフィア管がハリスの交響曲第3番をカップリングとして取り上げているあたり、ハリスという作曲家も、まだそれなりに認知されていたということかもしれません。

演奏は、オーマンディらしく丁寧なもので、作品の真摯でしっとりした側面がにじみ出ている好演だと思います。もしかしたらBox物としてCDになっているのかもしれませんが、まだ入手していません。ちなみに<田園風>の部分はカットなしの演奏です。

アイヴズについてはまた、機会があれば、取り上げてみたいと思います。

2025年9月19日金曜日

ガンサー・シュラーとの対話

A Conversation With Gunther Schuller, Composer of Seven Studies on Theme...


非売品のレコードで、放送局が使うものとして作られたもののようです。内容としては、インタビューアーの質問にガンサー・シュラーが答えている音源のうち、インタビュアーの部分を全部カットしたというものです。それでインタビュアーの部分はどうなっているかというと、レコードのインサートにその文章が書かれているというものです。

それで、実際に使う場合は、スタジオで放送局の人がインサートに書かれた問いを話し、それに続いてレコードを回すという形で使うということなのですが、それは技術的にはかなりリスキーだと思うので、おそらく現実的にはインタビューの形に編集したテープを流すのが無難なのではないかと思います。

私も一応中古盤でこのレコードを持っているのですが、残念ながらインサートは付いていませんでした。以前 eBayにインサート付きのが出品されたことがあり落札したのですが、eBayの方でアメリカから持ち出し禁止とされたようで、結局レコードは没収され、返金処理がなされました。

インタビューはシュラーの生涯を振り返る内容で、なかなかそれ自体は面白いですが、それに加えてラインスドルフ/ボストン響の演奏による《パウル・クレーによる7つの習作》の各楽章の解説と演奏(フル)が収録されています。

サード・ストリームで有名なシュラーで、管弦楽組曲《パウル・クレー…》にもジャズを使った曲があるのですが、シュラー的には、これはサード・ストリームではないということでした。というのも即興が入っていないからだそうです。オーケストラ奏者は即興できないので、すべて記譜したとシュラーは主張しています。

2025年9月17日水曜日

神奈川フィルハーモニー管弦楽団、第407回みなとみらいシリーズ定期演奏会


[日時]
2025年9月13日(土曜日)14:00開演

[場所]
横浜みなとみらいホール

[出演]
エステバン・バタラン(トランペット)(アルチュニアン)
村上公太(テノール)、神奈川ハーモニック・クワイア(男声合唱)(リスト)
クレメンス・シュルト指揮神奈川フィルハーモニー管弦楽団

[曲目]
アルチュニアン/トランペット協奏曲変イ長調
リスト/ファウスト交響曲 S.108

[プレイベント]
榊原徹音楽主幹と神奈川ハーモニック・クワイアのクワイアマスター岸本大氏によるトーク
・リスト/ワイマール賛歌S.313(神奈川ハーモニック・クワイア メンバーによる)

以下、メモ・感想を。

13:35からのプレイベントでは、音楽主幹の榊原さんから、満を持しての《ファウスト交響曲》であるということ、そして最後の5分間で独唱テノールと男性合唱の聴きどころがあるということ、リストがワイマールの宮廷楽長だったこと、ワイマールが《第九》のシラーが住んだ場所でドイツの文学・芸術の町であること、《ファウスト交響曲》と《ワイマール賛歌》についての解説があった。神奈川ハーモニッククワイアの岸本さんからは、メンバーがオペラを中心に活躍している人たちであることが話された。そして常日頃から音楽づくりにドラマを感じていると言うこと、メンバー一人ひとりの自発的な音楽づくりが全体につながっていることなどが話から伝わってきた。《ワイマール賛歌》も聴けて、得した感じ。

本編演奏の方だが…アルチュニアンの作品は、冒頭から懐かしい…というのかな…アルメニアと聞いてなるほど、と思わせる旋律線が登場した。第2楽章では、2種類のトランペット・ミュートが使用されていた。第3楽章の終盤には、圧倒的なカデンツァがあり、盛り上がったところで、シンバルの一撃があった。

トランペットの独奏を担当したバタランは、スター性でアピールと言うよりは、作品そのものへの没入感、あるいはオケとの一体感で聞かせるタイプの人だろうか。実はすごい技巧の持ち主なのに、あまりにも難しい箇所もさくっと吹けて、どこが難しいのかがわからなくなる…という私の大好きな方向かと思った。

アンコール曲(サンドバル:《ミスター・バタラン》)はとてもムーディーなポピュラー曲のアレンジだろうか。フリューゲル・ホーン→クライマックスでトランペット→フリューゲルという持ち替えも行っていた。最後の余韻はもう少し聞きたかったかも。最後の弱音のロングトーンはすごいのだし。

リストの《ファウスト交響曲》といえば、後述するように普段はバーンスタインの録音を聴いているのだが、今回のシュルトのアプローチはそれとはもちろん違っていて、バーンスタインの「暑さ」というよりは、シャープで鋭い感覚が特徴的だったように思う。そしてドラマチックな側面が際立っていて、語り口もとてもうまい。

また、個人的には第二楽章にとても強い興味を抱いた。リストは本当に素晴らしいオーケストレーターだと思うのだけれども、単に大鳴りにするのではなく、いかに自分の目指してる音を効率よく生み出せるかと言うことについての知識がとても豊富だということがわかった。これは彼が宮廷楽団の監督となっていたと言うところも大きいのだろう。やっぱり良いオーケストレーターだなぁと思う。もちろんオルガンの響きやテノール独唱、そして男性合唱なども興味深い。

歌われるファウストの一節は、マーラーの《千人の交響曲》の第2部の終結部にも使わているというのが、改めて面白い。そしてこの女性性なるものと相反するような男性合唱の組み合わせというのも興味深い。最後だけにオルガンと合唱を用いるという仕掛けも贅沢な感じがして、そしてそれが必要であるということも改めてわかった。合唱の響きになかなかじんわりする味わいがあり、やっぱり《ファイスト交響曲》が素晴らしい作品ということが実感でき、生で聴けて本当に良かったと思った。



神奈川フィルを聞いたのは本当に久しぶりだった。そして今回はやはりリストの《ファウスト交響曲》を聴きたくて足を運んだ。《ファウスト交響曲》に関しては、アメリカ留学時代にLawrence KramerのMusic As Cultural Practice, 1800-1900という本の中でフェミニズム理論で《ファウスト交響曲》を読み解く文章があって、あまりその内容は覚えていないのだが、それ以外、何となく曲目だけには親しんでいる、という感じだろうか。Kramer本を読みながら図書館にあったショルティのCDを聞いたのだが、当時はあまり興味が持てなかった。ただ日本に帰ってきて、やはりこれは評論家が推しているバーンスタインだろうと思って、バーンスタインが録音したコロンビア時代の録音の、ニューヨーク・フィルハーモニーだと思ったけれども、CDがあって、改めて聴いて、そちらでは、とても面白いと思った。そして今回の指揮者で、生の演奏を聴いてみたらどうなんだろうなというところだった。



2025年9月16日火曜日

オルガンとその仲間たち【フェリスホール・オルガンコンサート】(2025/9/15)

[日時]
2025年9月15日(月・祝)14時00分開演(13時30分開場)

[場所]
フェリスホール

[出演]
アコーディオン・笙/早川幸子
パイプオルガン/三浦はつみ
パイプオルガン・リードオルガン/宇内千晴

[曲目]
N. ブルーンス:前奏曲とフーガ 第1番 ホ短調 《グレート》
パイプオルガン/宇内千晴

W. B.ブラッドベリー:飼い主わが主よ(讃美歌)
リードオルガン/宇内千晴

H.ジロー:パリの空の下
アコーディオン/早川幸子

菅野よう子(坂本日菜 編曲):花は咲く ―ソプラノとベビーオルガンのための―
E.エルガー:行進曲 《威風堂々》 第1番 ニ長調
リードオルガン/宇内千晴、アコーディオン/早川幸子

雅楽古典曲 《黄鐘調調子》 《越天楽》
笙/早川幸子

アメイジング・グレイス
笙/早川幸子、パイプオルガン/三浦はつみ

W. B.ブラッドベリー:主われを愛す(讃美歌)
リードオルガン/宇内千晴

W. ボルコム:ゴスペル・プレリュード 「主、われを愛す」
J. S. バッハ:ピエスドルグ ト長調 BWV 572
パイプオルガン/三浦はつみ

今年のフェリスホール・オルガンコンサートは、これまではちょっと違う方向性を示していた。すなわちオルガンを出発点としつつも、オルガンと構造的に共通点がある楽器を一同に介して楽しむ企画といえるだろうか。例えば空気を送りこむ点と鍵盤がトリガーになっている点はオルガンと似ているけれども音を出す機構に違いがあるリードオルガン、そしてそこからさらに発展させて、アコーディオンや笙も舞台に乗せるというもの。作品も様々で、北ドイツオルガン楽派のブルーンスからシャンソン、東日本大震災の復興ソング、雅楽、讃美歌、そして最後にバッハのオルガン作品など、既存の「クラシック」に囚われない楽しい内容だった。

宇内先生によるブルーンス作品の後、三浦先生が「かっこうオルガン」という2つの音のみが出せる、ふいごと鍵盤のみに特化したモデルみたいなものを使って、オルガンの音がでる原理を分かりやすく解説されていた(演奏会室の長澤さんが小さなカメラを使って楽器にズームアップし、その映像をステージ奥のスクリーンに投影するというグッドアイディア!)。一応文献の上で、文字の上では楽器のことはわかっていても、実際に簡素ながらも音の出る仕組みがとても分かりやすかった。

リードオルガンの場合も、実際に使われているリードそのものを宇内先生が提示され、金属リードがとても小さいということもわかったし、実はリードオルガンの場合は、息を吸ったときに音が出ると言うことも初めて分かった。アコーディオンの場合の左手の様々なボタンと言うものを、どうやって手探りの状態で探すのかということであったが、ボタンのいくつかは見えなくても印がついているものがあったり、少々凹んでいたり(?)というのが面白かった。とはいえ左手は結構難しそうで、曲の途中に転調がある曲などは正しい調にさっと移動するのが難しそうだなと思った。

笙とオルガンの合奏は特に面白く、曲も《アメイジング・グレイス》であり、これはバグパイプでも演奏する曲だと思うのだけれども、三浦先生がオルガンの、バグパイプっぽくなるストップを使われていて、それがとても面白かったのと、笙とオルガンとの両者の音量についても絶妙なバランスだった。また笙が醸し出す和音と西洋由来のオルガンが生み出す和声のあり方が微妙に違っていのが、かえって興味深く、不思議な合奏に見えたのが、とても印象的だった。

コンサートは終始和やかな雰囲気で、多くのお客さんが来られていた。個人的には私の後ろの列の方が演奏中にお話を始めていたのが、やや残念。楽しいコンサートであるのでリラックスされているのだろうが、やはり話し声は演奏を楽しみたい人には気になるだろう。視線をこの方たちに向けている人もいらっしゃった。

なお、昨年度に引き続き、今年のオルガンコンサートも、私がプログラム・ノートを執筆した。昨年の「オルガンコンサート」はリストのオルガン作品を核としてピアノ曲も含めた重厚な内容でとても勉強になった。演奏をされた三浦先生や宇内先生からそのプログラム・ノートの内容を評価いただき恐縮至極であるが、本年度も書かせていただくことになった。しかも今回は企画内容を尊重し、演奏曲目そのものよりも楽器に重点を内容をご希望いただいた。そのおかげで、リード・オルガンやアコーディオン、笙の楽器構造や歴史について、おおいに勉強になった。また早川先生には執筆のための参考資料もご提供いただき、感謝申し上げたい。



ちなみに今日の午前中は、研究室で仕事用の書類を探していた。アメリカ音楽を扱いながらも、どうしても音楽以外の書籍に手を出さざるを得なくなり、ちょうど探していたテーマに即した、アメリカ思想史(文化史)の関係の本がうまく見つかってとても良かった。ただこれを今後もう少し読み込んでいかないといけないとも思うので、そこは大変かもしれない。


ニュー・ミュージック・アンサンブル『ニュー・ミュージック・アンサンブルII』(自主制作アルバム)

New Music Ensemble II. New Music Ensemble. NME Records 22764. 


ニュー・ミュージック・アンサンブルは楽譜を使わないで行う即興演奏のグループとして最初のものだったかと思います。集団即興グループ自体は、これ以前にも、例えばルーカス・フォスがやっていたと思いますが、演奏者を楽譜から解放するという意図で考えられた即興方法は、演奏者に一定程度の選択肢を与えてはいるものの、五線譜からの発想であることは変わりなく、また、大まかな指示はあっても、聞こえてくるものは割と「確定」された感覚があります。このグループは、ずっと臨場感があります。

もともとは1963年にラリー・オースティンのもとでスタートしたグループでしたが、これは、後述するように、彼がローマに行っていて参加していない2枚目のアルバムですね。個人的にはオースティンが参加している1枚目よりも即興が濃厚になっているように思います。ただ、それぞれの即興の時間は短いです。また1枚目には1枚目の魅力があるとは思います(あちらはステレオ録音ですし)。

オースティンはサバティカル(研究のための長期休職)の年、1964年から65年にかけてローマを訪れ、そこでニュー・ミュージック・アンサンブルのテープやレコードを聴かせたといいます。特にフランコ・エヴァンジェリスティが興味を持ち、それがグルッポ・ディ・インプロッヴィザツィオーネ・ヌオーヴァ・コンソナンツァの結成につながったとされていますね。


2025年9月15日月曜日

ペンデレツキ作品集(広島の犠牲者に捧げる哀歌、蛍光、コスモゴニア、デ・ナトゥラ・ソノリス第2番)

Penderecki: Threnos to the Victims of Hiroshima, Fluorescenses, Kosmogonia, De Natura Sonoris II. Philips (Sequenza Special) 412 030-1 (レコード)

ステファニア・ヴォイトヴィチ (ソプラノ)、カジミェシュ・プステラーク (テノール)、ベルナルド・ワディシュ (バス)、ヴィトルド・ロヴィツキ (《哀歌》のみ) マルコフスキ指揮ワルシャワ・フィルハーモニー交響楽団ならびに合唱団

Naxos Music Library (コスモゴニア/時と静寂の次元/デ・ナトゥラ・ソノリス第2番)
Amazon (同上)

富山の書庫から持ってきたレコード。ペンデレツキといえば、僕的にはこの1枚かなあ。中でも《コスモゴニア》が圧巻。すこしずつ暴れて盛り上がり、突然の協和音から乱れ歌う声楽陣。クラスターも面白いし、ホワイト・ノイズ的な音響にもすごみがある。

その他の作品も面白い。《哀歌》は最初軽いかな〜と思ったけど、これはこれでいいんではないかなあ。

記憶によれば、確か石丸電気で買った1枚。