2009年1月15日木曜日

聴いてますか? The MTT Files

The MTT Files (American Public Media & the San Francisco Symphony)
http://americanpublicmedia.publicradio.org/programs/mtt_files/

僕の友人が最近、アメリカの指揮者ティルソン=トーマス (MTT) がホストをつとめている『The MTT Files』という番組を、英語の勉強も兼ねて聴いているというので、さっそく、そのうちの一つのエピソードを聴いてみました。彼が面白いというThe Last Virtuoso (最後のヴィルトゥオーゾ) と題された第5回で、ヤッシャ・ハイフェッツを中心に、なぜ現在、彼のようなヴィルトゥオーゾは輩出しないのかを語っているそうです。

途中まで聴いてみたのですが、MTTが南カリフォルニア大学に入学したころにハイフェッツのマスタークラスがあって、レコードやロス・フィルで聴いた、この伝説のヴァイオリン奏者が、ぐんと身近な存在になったそうです。また、ハイフェッツがピアティゴルスキーらと指揮者なしのオーケストラ作るにあたって、リハ用の指揮者がいることになって、自宅を訪れるっていうエピソードがMTT自身の語りで紹介されていました。

それによると、ハイフェッツは2時5分という、わざと00分からずらした時間に来いと言い、ぴったりになると、家のフェンスが自動に開くようになっているそうなんです。これは早く到着してベルを鳴らしても無視されるし、遅れて行ったら門が30秒後に自動に閉じることになってて、二度とハイフェッツにお目にかかることはないということらしいのです。それくらいの「正確さ」を彼は要求してくるのだとか…。

また、ハイフェッツの家でプロコフィエフのヴァイオリン協奏曲第2番の第3楽章を合わせていたとき、ハイフェッツが「オーボエの3連符の箇所が気になる」と言い出したのですが、曲をしっかり勉強したMTTは「それ、オーボエじゃなくて、クラリネットですよね」返します。ハイフェッツは何度も「いや、オーボエだ」と迫るのですが、MTTは「楽譜の版があるいは違うのかもしれませんが、クラリネットじゃないでしょうか」と譲りません。

それで結局、ハイフェッツはMTTと一緒に楽譜を確かめることになります。そしてハイフェッツが「おやおや、確かにクラリネットだ。私のミスだ」と言うことになり、その場は解決したのでした。

あとで、その話をMTTがピアティゴルスキーにしたら、それはハイフェッツがわざと間違えて、MTTを試していたんだということらしいのです。MTTが曲をちゃんと知っていたのか、そして、ハイフェッツと向き合って、正直に意見を言えるかどうかということを。

いやあ、まさに伝説のような話です。

以前にもブログで書いたのですが、個人的に、ハイフェッツは、僕が幼稚園か小学校に入りたての頃、祖父が古道具屋で買ってきたSPレコードで聴いて以来だから、何となく馴染みがある演奏家なんです。その時に触れたメンデルスゾーンの協奏曲は、後にRCAにも録音 (MTT Filesでも流れてます) していますが、それにはないヴィルトゥオーゾが聴けます。ものすごい速度で演奏していますから (現在はEMIからCDになって出ています) 。

彼の録音では、大学学部時代に、無伴奏パルティータ&ソナタ (RCA) を、新潟は古町のツモリレコードで買ったことがあります。一緒に行った友達はシェリングを買ってて、当時は「冷たい演奏」と評したレコード雑誌の一言を見て後悔したものですが、今は時々聴いております。

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