2023年11月5日日曜日

日本音楽学会 第74回全国大会 2日目:研究発表M 雑記メモ

小田玲:近藤譲《林にて》における洗練された曖昧さの構造

近藤譲の《林にて》は、僕自身、アメリカの授業内で口頭発表をしたことがあるので、若干馴染みのある曲だったりします。その時は、発表者が否定的に取り上げた「ピッチクラス」が分析に有効なのではないかという意見が指導教員 (Jane Piper Cledinning) からありました。実はこの意見自体は、いまでも案外有効なのではないかと思っっています。すなわち「直感」的に、理論的背景ではないところから生まれてくる音の抽出を、ある程度機械的に調べて見えてくるものがあるんではないかなあということです。作曲者もピッチクラス・アナリシスは否定するのでしょうけれど…。特に全体を見据えた分析をする必要はないでしょうし、それが有効でないというのは、発表者と同意するところ。そこはシェンカーとは違いますよね。

長谷川由依:1930〜50年代日本の作曲家による音楽創作と「民謡」

「俚謡」が「民謡」となった背景には、やはり国家主義的な考え方があるんだろうなあと思わされました。もちろん "Volkslied"の訳語として誕生したということもあるのでしょうけれど…。確かに戦前は放送局中心・戦後は作曲家中心の考察になっているという司会者からの指摘はごもっとも。でも今後が楽しみといえるのかもしれませんね。

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