2023年8月29日火曜日

ありえるかもしれない、ガムラン ― Music in the Universe ―

 藤枝守:『ピアノとガムランのためのコンチェルトno.2』(2023)[世界初演]
 ガムラン:マルガサリ
 ミニピアノ:砂原悟
宮内康乃:『SinRa』(2023)[世界初演]
 ガムラン:マルガサリ
 声:つむぎね
 ルバブ:ほんまなほ
ホセ・マセダ:『ゴングと竹のための音楽』ガムランと龍笛(ピッコロ)、コントラファゴット、打楽器、合唱団のための(1997)
 指揮:野村誠
 ガムラン:マルガサリ
 龍笛:伊崎善之
 コントラファゴット:中川日出鷹
 打楽器:中谷満と「相愛大学音楽学部打楽器合奏団」(小野竜聖/川久珠寿/鈴木彩葵/高眞炫/中谷満/花田零/星山理奈)
 合唱団:東京少年少女合唱隊
小出稚子:『Legit Memories』(2023)[世界初演]
 ガムラン:マルガサリ
 歌:さとうじゅんこ
 サクソフォーン:植川縁
野村誠:『タリック・タンバン』(2023)[世界初演]
 ガムラン:マルガサリ+野村誠ほか
 角瓶/綱引き/相撲etc.:だじゃれ音楽研究会 ほか


遅ればせながらの忘備録。楽曲解説は見ずに、タイトルだけ確認して書いておく。

藤枝守:《ピアノとガムランのためのコンチェルトno. 2》
今回の5曲の中では、とてもシリアスなアプローチだったような気がする。ミニピアノっていうのは初めて見た・聴いた。トイ・ピアノよりは大きいけど、アップライトピアノからみたら、めちゃめちゃ小さい。ガムランはゴングとメタロフォンで構成されており、メタロフォンの金属的な音がやや和らいでいるようだった。もちろん全くメタロフォンが全くなくなった訳じゃないし、ウインド・チャイム?も入ってくるので、「キラキラ」した感じは残っていた。ガムランといえばリズム・サイクルだけど、ゴング・アグン?がそれを一応明示しているのかな? ミニピアノはメタロフォンよりも運動性が上と考えられるので、当然そういうった特性をイディオマティックに使うということなのかな?(そこまで聴ききれていない…)。オルタナティヴ・チューニング(ペロッグ)の妙技は、最初は違和感があったということは正直に告白したい。ただ、ピアノよりも共鳴体が小さいからか、弦の金属的な側面?はピアノよりもストレートに出るっていうこともあるのかな?とすると、ガムランとの親和性はピアノよりも高そう。各楽章ごとに拍手があった。

宮内康乃:《SinRa》
冒頭の「森の朝」?の音風景部分を会場に委ねる冒頭。舌打ちしたり、ツッとか言ったり3つの声のパートを各自で選ぶ。会場は開いている席もあるけどそれなりのキャパのホールなので、一斉の音出しは面白くなさそうなんだね。空間性と偶然性ということで、音風景の再現には面白い。次第にコーラスを交えて(こちらもいろいろ声の効果を活用していた?)、またコレオグラフィーもあったみたい。中間部にルバーブの長いソロがあって、最初はどこから聴こえてきたのか分からなかった。その後、舞台上を中心に架空の儀式?みたいのが続いて、夜を迎えた?という理解でいいのかな? プログラムノートは後で読んでみよう。

ホセ・マセダ:《ゴングと竹のための音楽》
ガムランの「異化」を目指している曲?と理解して良いのかな? ただ篠笛(→龍笛に訂正)自体はスリンっぽい音色でもあるし、意外と同化していたかも。コントラファゴットの方は、確かに音は異物っぽい存在になりえるのだけれど、全く違うという脳内処理をしていて、特に気になる存在にならなかったのが興味深かった。時折合唱が入ってきて、その意味をいろいろ考えたり。あるいみこの合唱が一番ガムランと遠い存在であったような気もする(フィリピンはキリスト教由来の西洋音楽の伝統もしっかりあるのだけれども)。その他フィリピンのバリンビンかな?も入ってたみたいだ。地理的・文化的に近いからか、東南アジアの民族楽器どうしは、むしろ自然な形に思えた。インドネシアにはジェゴグという竹のガムランもあるしね。マセダはガムランを「権力の音楽」と述べていたらしい。ジャワの宮廷ガムランなんかはそうなんだろうな。でも日本で人気のバリ・ガムランもそういう見方ができるのかな? 村の共同体への参加を「強いられる」という側面がある???

小出椎子:《Legit Memories (組曲 甘い記憶)》
さとうじゅんこさんの歌声がとにかく素敵だった。複数語を見事に歌っていたし。発声的にはインドネシアの音楽に合うということなのかな? 日本語だと分かっても違和感なく溶け込んでいて、不思議ですごい。サキソフォンがときどき刺さる感じはしなくもないのだけど、それも、マセダ作品のコントラファゴットと同じように、「ふ〜ん」という感じで流せたような気がする。前半3曲に比べて、普通にガムランを聴いたという印象が強かった。

野村誠:《タリック・タンバン》
野村誠作品…は初めて??? いろんな次元で・意味でインクルーシヴなのだなあということで、率直に面白く、知的な刺激にも満ち溢れていた。芸能のルーツ、スポーツと芸能、音楽と舞踊、動きと音楽、芸能なのか音楽なのか、アジアの中の日本とインドネシア。伝統楽器と創作楽器、音階の有無、話し言葉と歌、舞台と客席、生音とアンプリファイされた音…。そのほか、ゲーム的不確定要素、即興的要素、イヴェントとしての音楽、健常者と障がい者・若者と年長者の参加、聴衆の参加、サントリー(経団連会長の発言は…)とサントリーホールにちなんだネタ…。いろいろな要素が手際よく持ち込まれる。音楽的要素もうまく取り込まれている。

前半終わったところで1時間半、全部で3時間20分。これって「ガムラン時間」なのかなあ。左隣に親子連れで、お嬢様が前半の最後の方は落ち着かず、お母さんとも時々会話があり(これは後半も同じ)。右隣は時々咳をしており、不安。いまのところ僕は大丈夫だけど…。

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