ショア(SHOAH)は、1985年のフランス映画。クロード・ランズマン監督。上映時間は9時間30分。製作には1974年から11年の歳月を費やした。日本での公開は1995年、東京日仏学院で行われた。すごい映画です、これ。語られる内容は軽いものから重いものまで様々。確かに全9時間という長い映画ではありますが、あっという間に観てしまいました。
ユダヤ人絶滅政策(ホロコースト)に関わった人々へのインタビュー集であるが、演出もところどころ行われており、全くのドキュメンタリーではない。
インタビューの対象は、被害者たるユダヤ人生還者、加害者たる元ナチス、傍観者たるポーランド人に大別することができる。
クロード・ランズマン監督はこれまでのホロコーストをテーマとした映画にきわめて批判的である。特に『シンドラーのリスト』に対しては、出来事を伝説化するものであるとして舌鋒鋭く批判している。
(出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』、「ショア (映画)」の項目。http://ja.wikipedia.org/wiki/ショア_(映画))
よく"Let the truth speak for itself" と言いますが、この映画は、ただの垂れ流しでは絶対にないでしょう。 細かいカットが挿入されていたり、カメラの距離や方角などの変化があり、明らかに「素材」ではないことは分かります。誰へのインタビューをどういう順番でいれるかということも、大きな要素になりそうですし。
そして、音・音楽は意外と大きな要素になっています。まず音楽ということであれば、歌声の美しさによって一命を取り留めたユダヤ人の話もありますし、チェコのユダヤ人がこれからガス室に入ろうとする前に《希望》というタイトルの国歌を歌ったという特務員の証言に、私は込み上げるものを感じてしまいました。水木しげるの『総員玉砕せよ!
音まで含めて考えますと、語られる過去と映画を撮った時点の「現在」とは対位法的にならざるを得ないということもあって、いろんな対比を考えてしまいます。映画撮影時の虐殺現場の静けさと、そこで起こったことを語る証言の中の叫び、ユダヤ人を運ぶ汽車の走る音と田園風景の静けさ、自然界に住む鳥たちの声と社会の中で強制的に歌わされる人間の歌等々。ああ、ライヒの《ライヒ/ディファレント・トレインズ
『ショアー』には、作曲家が改めて作るスコアの入り込む余地はありません。もちろん扱われている題材もそうですけれど、ドキュメンタリーであるということも一つでしょうか。ふと日本の報道ドキュメンタリーのことが頭に浮かんだりもします。とはいえ、NHKにしても、民放にしても、ドキュメンタリーには、結構いろんな音楽が入ってたりするような気がします。特にナレーション部分にです。やはり、この映画ほど徹底したものではないでしょう。
しばしば比較対象になる『シンドラーのリスト
・早尾貴紀「パレスチナからの手紙」 (「文化フォーラム」)
http://archivista.hp.infoseek.co.jp/bunzemi/hayao99.html
僕自身、『ショアー』と『シンドラー』と、どちらの映画が勝ったか負けたかなどということには興味がないのですが、ホロコーストについて僕が俄然興味を持つことになった映画は『ショアー』です。
それにしても、いかに「効率よく」ユダヤ人を虐殺するか、熱心に研究できてしまう精神状態とはどういうものなのでしょう (トラックの形状、列車ダイヤの考案 etc. ) 。ドイツ人というのが、ひどく勤勉であることを感じながら、その勤勉さを発揮する方向が、ここまで狂ってしまうというのは、恐ろしいことです。
日本の歴史認識は、ランズマンのような厳しい問いかけをする監督を生み出すことができるのでしょうか?
とにかく壮絶な映画でした。残酷な映像というのは一つもないんですけれど。
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