2024年4月25日木曜日

ディズニー・マジカル・ワールド (エリック・カンゼル指揮シンシナティー・ポップス)

意外といいんですよ、このアルバム。もちろんオリジナルじゃなくて、カヴァーになると思うんですけど、「ディズニー・オン・クラシック」が好きな方だったら、これも楽しんでいただけるんじゃないかと。ステージ感満載ですし、録音もよいですし、アレンジも素敵かなと。

メンケンが担当した3作品とエルトン・ジョンの『ライオン・キング』ということで、「ディズニー・ルネサンス」の最盛期の名曲揃いですから安心ですね。

『ライオン・キング』の《サークル・オブ・ライフ》は、レボMの「ガツーン」というヴォーカルじゃないし、歌は斉唱で始まるので、「えっ」と思われるかもしれません。でもオープニングはハンス・ジマーのスコアでLKの世界に浸れるんですよね。歌本体もサビまでくれば、これもありかも!と思えるんです。


収録内容
1 『ライオン・キング』組曲 《サークル・オブ・ライフ》
2 『ライオン・キング』組曲 《王様になるのが待ちきれない》
3 『ライオン・キング』組曲 《ハクナ・マタタ》
4 『ライオン・キング』組曲 《準備をしておけ》
5 『ライオン・キング』組曲 《愛を感じて》
6 『ライオン・キング』組曲 《キング・オブ・プライド・ロック》
7 『アラジン』組曲 《アラビアン・ナイト》
8 『アラジン』組曲 《ひと足お先に》
9 『アラジン』組曲 《フレンド・ライク・ミー》
10 『アラジン』組曲 《ホール・ニュー・ワールド》
11 『アラジン』組曲 《アリ王子のお通り》
12 『リトル・マーメイド』組曲 イントロダクション
13 『リトル・マーメイド』組曲 《パート・オブ・ユア・ワールド》
14 『リトル・マーメイド』組曲 《アンダー・ザ・シー》
15 『リトル・マーメイド』組曲 《哀れな人々》
16 『リトル・マーメイド』組曲 《レ・ポワソン》
17 『リトル・マーメイド』組曲 《キス・ザ・ガール》
18 『リトル・マーメイド』組曲 《ハッピー・エンド》
19 『美女と野獣」組曲 プロローグ
20 『美女と野獣」組曲 《ベル》
21 『美女と野獣」組曲 《ひとりぼっちの晩餐会》
22 『美女と野獣」組曲 《ガストン》
23 『美女と野獣」組曲 《美女と野獣》

2024年4月23日火曜日

モートン・グールド:《アメリカン・シンフォネット》(?) 第1番

 Morton Gould: American Symphonette #1, 1st mvt. only. Gould cond. unk. orch. 
モートン・グールド:《アメリカン・シンフォネット》第1番、第1楽章 (アレグロ・モデラート) のみ モートン・グールド指揮オーケストラ (詳細不明) 

モートン・グールドの《アメリカン・シンフォネット》のシリーズは、確か4番までが残されていたと思うのだが、商用発売されている音源で聴けるのは2番以降の3曲のみ。1番というのは、この録音を聴くまで一度も聴いたことがない。

この録音はラジオ放送のトランスクリプション・ディスクなのか、レコード盤特有のノイズが入っている。番組のホストは曲を《アメリカン・シンフォニエッタ》と紹介しているが、単に間違ってタイトルをアナウンスしているのだろうか…。金管楽器やギター、サキソフォンはノリノリのスウィング・リズムなのに対し、弦楽器やフルートをはじめとした木管楽器はクラシックのスクエア・リズムで、それがまた絶妙に面白い。第2楽章<スウィング・タイムのメヌエット>も引き続き演奏されていたみたいだが(1楽章ごとにアナウンスが入っていたっぽい)、ここには収録されていない。第1楽章だけでも、なかなか面白そうなので、実に残念。

なので、なんでこの《アメリカン・シンフォネット》の第1番は録音されないのか、前々から不思議なのだが、もしかすると楽譜が残っていないということなのだろうか?

なお曲については、こちらでも紹介した。

2024年4月20日土曜日

神奈川フィルハーモニー管弦楽団 みなとみらいシリーズ定期394回(感想メモ)

 開演時間:14:00
公演場所:横浜みなとみらいホール
指揮者:沼尻竜典(音楽監督)

ブルックナー/交響曲第5番変ロ長調(ノヴァーク版)

2024-25シーズン最初の定期公演ということで「記念碑的な作品」を選んだという沼尻氏。メリハリの効いたコントラストに目を瞠る第1楽章から、はっきりくっきりした旋律線が聞こえてくる。そして全楽章に共通する特徴として、金管のハーモニーの気持ちよさ。情熱を込めて奏される低弦のトレモロにも心が揺り動かされる。単なるアルコの引き伸ばしでないところにも、きっと意味があるのだろう。

第2楽章は、さらりとしつつも深い歌い込み。美しい。分かりやすく整理されたスケルツォ(第3楽章)につづき、第4楽章は、3楽章までの主要動機が散りばめつつ始まり、立体的でドラマチックなフーガに続き、ブルックナーとしては意外なほどに作られた抜け目ない充実したフーガを、沼尻氏は畳み掛けるようにがっちりリードした。

これは、聴衆がすぐにブラヴォーを始めるんだろうな、と思っていたら、案の定、最後の一音が高らかに鳴り響くとすぐにブラヴォーが。沼尻氏は「最後の一音の余韻まで」を想定していたのか、必死に拍手を止めてほしいというジェスチャーを送っていたようだった。最近ネットでは「フライング・ブラヴォー」について批判的な論調が展開しているようで、それはそれで一定の正当性を感じつつも、今回のこれは、仕方ないところもあるんだろうなあと思ったりも。気持ちが抑えきれなくなる、というくらいの良い感情の流れだった。聴衆の反応までをコントロールすることは、そもそも不可能だし、難しいところではある。

2024年4月18日木曜日

ドン・ギリス作品のSP音源

ドン・ギリス:《辺境の町の肖像 Portrait of a Frontier Town》組曲から第3曲<牧場主の家でのパーティー Ranch House Party>演奏=スタンフォード・ロビンソン指揮ニュー・コンサート・オーケストラ(New Concert Orchestra; Stanford Robinson, conductor)

ギリス:《これが我らのアメリカだ This is Our America》作曲者指揮管弦楽団、レイ・ミドルトン (Ray Middleton 独唱)、リズ・モーガン・シンガーズ (The Rhys Morgan Singers)
ドン・ギリスというと、陽気で能天気な作風で、また「アメリカン・サウンド」そのものという感じがする。風の抜けるような勢いのようなもの、あるいは団結して歌い上げたくなる気持ちの良さというか。《これが我らのアメリカだ》は愛唱歌<アメリカ>(チャールズ・アイヴズがオルガン変奏曲を作った旋律)なども引用されていて、時代的に第2次世界大戦と関係があるのかな、という感じがする。ただarchive.orgのデータだとリリースは1951年とあるので、ちょっと分からない。

《辺境の町の肖像 Portrait of a Frontier Town》は、ギリス自演のLPがLondon (英Decca) から出ていたと記憶しているが、SPでは、別の指揮者による録音もあるということか。

2024年4月17日水曜日

ラッグルス&アイヴズ 世界初録音集 (ニュー・ミュージック・クォータリーSPレコード)

ラッグルス:《ライラック》《おもちゃ》
アイヴズ:《ワシントン誕生日》から<バーンダンス><夜に> 

ニコラス・スロニムスキー指揮パン・アメリカ管弦楽団(《おもちゃ》以外)、ジュディス・リトアンティ(ソプラノ)、伴奏者不明(《おもちゃ》のみ)
New Music Quarterly 1013 (N.M.Q.R. 12・13、SPレコード) <録音=1934年5月>

CARL RUGGLES: Lilacs; Toys, Judith Litante, soloist
CHARLES IVES: Barn Dance; In the Night (from "Washington's Birthday")

Pan American Orchestra
Nicholas Slonimsky, conductor

FIRST RECORDINGS
New Musical Quarterly 78rpm disc 1013A, B (N.M.Q.R. 12, 13)
Recorded in May, 1934
Digital transfer by F. Reeder

ヘンリー・カウエルが主導し、チャールズ・アイヴズが資金援助をしていた New Music Quarterly の録音。Archive.org にはいろんなトランスファーがあるようだけど、録音自体は、これだけということかな。おそらくスロニムスキーの録音は、かつて他の曲がLPレコードとしても出ていたので、それもこのNMQRじゃないかと思うのだけど、とりあえず、これ自体は貴重な録音だろう。アイヴズは、やっぱりおっかなびっくり感(これでいいのかなあ、っていう感じ)があるなあ。

ノイズ処理がやや派手なので、アイヴズは背後にシャリシャリ感がどうしても残ってしまうけど、それが気になる方は他のトランスファーもあるようなので、探してみてほしい。

2024年4月9日火曜日

ニコライ・ベレゾフスキー (1900-53):交響曲第4番, Op. 29

Nicolai Berezowsky: Symphony No. 4.  Kansas City Philharmonic; Hans Schwieger (?), conductor.
ハンス・シュウィーガー指揮カンザス・シティ・フィルハーモニー管弦楽団

《クリスマス祝祭序曲》を紹介したときにベレゾフスキー紹介文を書いた (→当該ページ) 。今回は、他の資料も援用して、改定したものを掲載する。

ニコライ・ベレゾフスキーはロシア革命前のロシアに生まれ、声楽、ヴァイロイン、ピアノを学び、1916年にサンクトペテルブルグ宮廷聖歌隊から卒業。サラトフやモスクワの歌劇場管弦楽団においてヴァイオリン奏者を数年経験後、西側に行くことを決意。1922年にニューヨークに到着し、ジュリアードにてパウル・コハンスキ(パヴェウ・コハンスキ)にヴァイオリンを、作曲をルビン・ゴールドマークに師事した。すぐにヴァイオリン奏者として頭角を現し、ニューヨーク・フィル [第1ヴァイオリン] とクーリッジ弦楽四重奏曲のメンバーをつとめ、CBS交響楽団の団員でもあった。さらに指揮者、作曲者としても知られ、ボストンのセルゲイ・クーセヴィツキーがベレゾフスキー作品の演奏をすすんで取り上げた。このうち4つの交響曲 (1925年、29年、36年、43年) がボストンやその他のアメリカのオーケストラで取り上げられた。このほかベレゾフスキーの作品には、ハープ協奏曲、チェ ロと管弦楽のための《コンチェルト・リリコ》(ピアティゴルスキーとクーセヴィツキーにより初演)、ヴァイオリン、ヴィオラ、テレミンを独奏楽器にした協奏曲、弦楽四重奏曲、木管五重奏曲、ギルガメシュのバビロニアの物語を題材とした大スケールのカンタータも書いている。

ベレゾフスキーの大作の作風の特徴は、プロコフィエフを出発点とした、大戦間のフランス=ロシア風と呼べるが、活気ある軽妙な作品を作曲する才能にも恵ま れており、亡くなる数ヶ月前には、ジャン・ド・ブリュノフによる有名な絵本『ぞうのババール』をオペラ化した作品で成功を収めている。

その他にも《シンフォニエッタ》を作曲している。《シンフォニエッタ》はNBC放送が行った作曲コンクールで第4位を取り、1,000ドルの賞金を獲得した。楽譜も出版されている。

交響曲第4番は1942年の春遅くにニューヨークで作曲が始まり、11月に完成された。この交響曲は(クーセヴィツキー夫人を記念して設立された)クーセヴィツキー音楽財団の委嘱によるもので「親愛なるナタリア・コンスタンティノヴナ・クーセヴィツキーの思い出に 」という献辞が添えられている。

楽譜は、フルート2本とピッコロ、オーボエ2本とイングリッシュホルン、クラリネット2本とバスクラリネット、ファゴット2本とコントラファゴット、ホルン4本、トランペット4本、トロンボーン3本とチューバ、ティンパニ、バスドラム、サイドドラム、トライアングル、木琴、グロッケンシュピール、チャイム、チェレスタ、弦楽器で構成されている。

交響曲第4番は作曲家指揮によるボストン交響楽団により、1943年10月22日 (金曜日のマチネー) に初演されている。4つの楽章からなり、以下のような構成になっている。

I. Allegro non troppo, cantabile
II. Scherzo, vivace
III. Andante, molto sostenuto
IV. Allegro commodo, ma bravura

2024年4月8日月曜日

モートン・グールドのアルバム『ムービー・タイム』

 →Spotify

米Columbia時代のモートン・グールドの録音は、LP初期のモノラル録音(おそらくSPでもリリースされていたのだろう)のせいか、あまり聴かれることはないように思う。『日曜洋画劇場』のエンディング・テーマだった《ソー・イン・ラヴ》が収録されていたアルバム『カーテン・タイム』は、僕もオリジナルの音を突き止めるために買ったが、そのほかのアレンジもののアルバムはどうなのかな、と思って、ミュージカルの『カーテン・タイム』ではなく映画テーマ音楽が集められた『ムービー・タイム』も、実は入手している。

《ソー・イン・ラヴ》のような、ラフマニノフ風のシリアスなアレンジこそないのだけれど、いやあ、モートン・グールドのピアノは、このアルバムでも冴えていること。独特の哀愁が漂いますね。ピアノ作品の自作自演というレコードも米Daccaから出しているグールドなのですが、意外とそちらの方が耳に入ってこなかったんですよね。

モートン・グールドは、やっぱりオーケストラと共演した時の方が面白いのかな、と思いました。

惜しむらくは、このアナログ音源のデジタル化。もう少しうまく音響処理できなかったのかなあ、というところだろうか。

2024年4月5日金曜日

フィリップ・ジェームズ《ラジオ局WGZBX》(1932)

ジュリアス・ヘギー指揮アルバニー交響楽団 (Albany Symphony Orchestra; Julius Hégyi, conductor)
YouTube (こちらではオーケストラはアラバマ交響楽団 [Alabama Symphony Orchestra]になっている)

1932年、アメリカの民間ラジオ放送NBCによって主催された作曲コンテスト(全米のラジオリスナーも参加し投票した)で、見事1位を獲得し、ジェームズの名を一躍有名にした作品。ニューヨークで8月に作曲され、10月にオーケストレーションが行われている。放送初演はコンテストの審査員の1人のレオポルド・ストコフスキーによる指揮で、オーケストラは(トスカニーニが来る前の)NBC交響楽団である。

《ラジオ局WGZBX》は4曲からなる組曲で、「WGZBX」は存在しない放送局の名前である。作曲者ジェームズによると、この曲は「ラジオの音、ラジオの感動的な力、ラジオの若さ、ラジオの活気、ユーモア、苛立ち、そしてラジオと私たちの日常生活との関係」を描いたという。初演以来、この作品はラジオを風刺する曲と解釈されてきたが、それは作曲家の意図したところではなかったようだ。初演時はあちこちで演奏されたようだが、1940年代に入ると、その人気も失せてしまった。

<ロビーにて>と題された8分の6拍子の第1曲は、「大きなラジオ局の廊下 」を描いている。賑やかな放送局の雰囲気がロンドのように繰り返し登場するテーマで描かれ、間にラジオ番組の背景音楽なのか、「インディアン音楽」、中国風の音楽、そしてサキソフォンが飛び出す(ジャズの番組?)などが挟み込まれている。

第2曲<混信>は嵐が吹き荒れるなかで聴くラジオ番組という趣旨のようで、緊張感のある弦楽器から曲が始まる。機械文明を象徴するのか「ロボット」も登場する(この録音だと、舞台下手側、メガホン?か何かで叫んでいるようにしか聞こえないのだが…)。ピッコロが高音で「ピー」っという、ラジオからのノイズらしいものを吹く箇所もある。

<眠りの時間>と第された第3曲はメロドラマの一風景なのか、ヴァイオリンのロマンティックな音楽。ロンド形式による第4曲<マイク狂>は、我先にとマイクに群がる素人集団の賑やかな様子ということで、ラジオがお茶の間のエンタメのメインを牛耳っていた時代を象徴するかのようだ。

いまや忘れられた描写音楽という感じだが、初演当時は、ラジオが普及していた時代でもあるし、当世風だったのかもしれない。

2024年4月2日火曜日

ケンジ・バンチ (1973- ):交響曲第1番《リキテンスタイン三連画》(2008)

Kenji Bunch: Symphony No. 1 (2008). Santa Rosa Symphony; Jeffrey Kahane, conductor.
ジェフリー・カヘーン指揮サンタ・ローザ交響楽団
SoundCloud

3楽章形式。Varoom!、We Rose Up Slowly、In the Carというタイトルが付いている。

ケンジ・バンチ氏 (→作曲者サイト) は母親が日本人で父親がイギリス・スコットランド系アメリカ人なんだそうだ。なるほど、それで「ケンジ」ということか。ただ日本語が堪能かというとそうではないらしく、「半日本語 (half-Japanese)」が堪能なんだとか。よくわからない…。

この交響曲第1番は、おそらく商用音源にはなっていないとおもう。アメリカの画家ロイ・リキテンスタイン(→参考)へのオマージュということだそうで、3枚のコミック風の絵画の大胆な高揚感と色彩からインスピレーションを得ているとのこと。ジャズやポップスの要素を柔軟に取り入れているのだけれども、そのポピュラー音楽の影響が強いためか、「これって本当に交響曲と呼んでいいの?」という感覚を覚える。折衷主義が主流のアメリカ音楽の「いま」を聴くということになるのかな。

2004年、カリフォルニアサンタローザのサンタローザ交響楽団(指揮=ジェフリー・カヘーン)によって初演されたということだから、このSoundCloudの音源は初演時のものなのかも。