2016年3月28日月曜日

小森谷泉 x 小森谷巧 兄弟の小宇宙 〜最高の仲間を迎えて〜 (感想メモ)

 2016年3月13日 紀尾井ホール

モーツァルト 幻想曲ニ短調 Kv397 (385g) は重々しくアルペジオ一つひとつを確かめるように始める。感傷による衝撃、メランコリックな余韻。長調部分では小気味よいテンポ。こぼれ出る喜びを流れるように、しかしシンフォニックに表出。

モーツァルト ヴァイオリン・ソナタ28番ホ短調 K304 (360c)の第1楽章は潤いのピアノの響きと朗々としたヴァイオリン。神秘的なオープニングから自然に音楽を紡ぎだす。ヴァイオリン主導なのかピアノ主導なのかということを聴き手に意識させないシームレスな展開。明らかにヴァイオリンがメロディーの部分はあるが。

第2楽章はこぼれる哀しさ。ヴァイオリンのアルペジオは一瞬にして聞こえなくなるくらい。デュオの部分もある。一見淡々としているのだが、時々立ち止まり、全休止になって始まるところなど「合わせている」ことさえ感じない。

一気に崩さず、盛り上げてフィナーレに。

モーツァルト ピアノ五重奏曲ト短調 Kv478はダイナミックなピアノにつづいて、(くさびを打つような、リズム的推進力)しなやかな弦楽アンサンブル。もりもりとした。

展開部ではピアノがまず、それからヴィオラとヴァイオリン。再現部に突入する前の部分において、ぐっと深まっていくアンサンブル。再現部は、ここでもピアノがリズム的推進をし、情念を溢れる筋でつなげていく。

2016年3月12日土曜日

ガーシュイン、《パリのアメリカ人》のクラクションのピッチについて

Have We Been Playing Gershwin Wrong for 70 Years?という記事が『ニューヨーク・タイムズ』に掲載され、話題になっています。この記事では、《パリのアメリカ人》で使われるクラクションのピッチが議論になっています。ガーシュインのスコアには A, B, C, D と4つのクラクションが必要とあり、これまでは、A, B, C, D は音名と考えられ、1945年のトスカニーニの録音でもそうなっているとか。

どころがミシガン大学のMark Clagueが、現在 critical edition を作っているそうなのですが、彼はこの A, B, C, Dはクラクションの種類を示すだけであって、音名ではないと判断しているのだそうですね。

A, B, C, Dという文字はそれぞれ◯で囲まれているそうなのですが、これをどう判断するかということになりそうです(1, 2, 3, 4にしてくれれば良かったのに…という人もいるようです)。

ガーシュインの伝記を読むと、彼が特定のピッチのクラクションを探していたことが知られており、また彼が監修をした1929年のVictorの録音では、クラクションの音程がAb, Bb, ずっと高い D, 低いAなんだそうです。

ただガーシュインが使ったとされるクラクションはなくなってしまったということで、本当のことは分からないのですねえ。Victorの録音を絶対的なものと見ることに対する疑問もあるそうで…。ちなみにA, B, C, Dの音程だととてもピッタリ来るようで…。本当は調子っぱずれが正解だったのか、どうか…。

で、上記記事にもリンクされているガーシュイン監修(ガーシュイン自身がチェレスタを弾いているとも言われてます)の録音ですが、けっこう今の演奏とは違う感覚がありますね…。



zen-on piano for four hands 「ガーシュウィン:パリのアメリカ人(An American in Paris)」 全音

渡辺純一さんが楽譜浄書制作を担当され、私が楽曲解説を書いた《パリのアメリカ人》の連弾版が全音から出版されました。編曲をされたのは中島克磨さんです。全曲演奏がYouTubeにアップされたそうなので、シェアいたします。