2016年3月13日 紀尾井ホール
モーツァルト 幻想曲ニ短調 Kv397 (385g) は重々しくアルペジオ一つひとつを確かめるように始める。感傷による衝撃、メランコリックな余韻。長調部分では小気味よいテンポ。こぼれ出る喜びを流れるように、しかしシンフォニックに表出。
モーツァルト ヴァイオリン・ソナタ28番ホ短調 K304 (360c)の第1楽章は潤いのピアノの響きと朗々としたヴァイオリン。神秘的なオープニングから自然に音楽を紡ぎだす。ヴァイオリン主導なのかピアノ主導なのかということを聴き手に意識させないシームレスな展開。明らかにヴァイオリンがメロディーの部分はあるが。
第2楽章はこぼれる哀しさ。ヴァイオリンのアルペジオは一瞬にして聞こえなくなるくらい。デュオの部分もある。一見淡々としているのだが、時々立ち止まり、全休止になって始まるところなど「合わせている」ことさえ感じない。
一気に崩さず、盛り上げてフィナーレに。
モーツァルト ピアノ五重奏曲ト短調 Kv478はダイナミックなピアノにつづいて、(くさびを打つような、リズム的推進力)しなやかな弦楽アンサンブル。もりもりとした。
展開部ではピアノがまず、それからヴィオラとヴァイオリン。再現部に突入する前の部分において、ぐっと深まっていくアンサンブル。再現部は、ここでもピアノがリズム的推進をし、情念を溢れる筋でつなげていく。