2008年12月29日月曜日

映画『戦艦ポチョムキン』、クリティカル・エディション

小気味よいテンポでカットが挿入される、サイレント映画の傑作。僕はサイレント映画というのは、音がないから退屈するのだと、漠然と誤解していた。どのアングルから、どの方向から光の入った、どのくらいクローズアップした、どんな表情をしたカットを何秒挿入するのか、そんな「編集の妙技」と言ってしまえば陳腐この上ない一言に内包される感覚の鋭敏さが、映画にはきっと必要なのだろうな、と思わされた。

「圧政に虐げられた民衆が立ち上がる」というのを、いわゆる共産主義のプロパガンダだというのは簡単なことなのだけれど、高く掲げられる赤旗が星条旗で、字幕がアメリカ英語だったりして、細かな設定が「アメリカ仕様」だったらどうだろう。案外アメリカ人達は、「民主主義の勝利だ」と叫んで喜ぶんじゃないかと思ったりもする。大恐慌時代、アメリカのクラシック音楽にはナショナリズムが勃興した一方で、外ではマルクス主義に裏打ちされた労働運動も盛んになっていたのではなかっただろうか。いま若者の間で日本共産党を支持する人が増える一方で、日本全体が右傾化している。何となく歴史的に繰り返しているところもあるのではないかと思ったりもする。

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