ルストガルテン四重奏団 Bristol Records 番号なし (片面のみのレコード)
とある方から譲り受けたレコード・コレクションの中の1枚。片面のみ溝が刻まれているレコードは初めて所有することになったかもしれません。作曲者はレオン・ルイスとされていますが、このレコードのジャケットは手書きの赤字で、それ以上の情報はありません。
ということで、調べてみました。
レオン・ルイスは1890年3月30日にミズーリ州カンザスシティで生まれ、シカゴに育ちます。幼い頃から音楽の訓練を受け、「ピアノの神童」として奨学金を得てウイーン国立音楽学校に入学。 そこでピアノをテオドル・レシェティツキーに、指揮と作曲をヘルデン・グレーデラーとテルンに師事したという情報を得ました。テルンというと、カーロイ・テルンという作曲家が有名なのですが、年代的にはルイスが生まれる前に亡くなっているので、2人の息子のうちのどちらか、ということになるんでしょうか? パッと調べてみたところ、息子のウィリもルイスもウイーンでピアニストとして活躍したっぽいですが、エルヴィン・シュルホフも師事したというウィリだったのかなあ?
さてルイスは1910年に帰国し、コンサート・ピアニストとしてヨーロッパ、アメリカ、カナダをツアーします。時代柄、サイレント映画の音楽を担当した経験もあったようです。1920年代にはシカゴのラジオ局WBBMで音楽監督を務め、その後、CBSラジオ・ネットワークの交響楽団の指揮者を長年にわたって務めました。作曲活動に専念するようになったのは1945年頃からで、1960年10月5日、ロサンゼルスの娘を訪ねている最中に亡くなったということです。
《クァルテット・アメリカーナ》は1960年の作品。同年にルイスは亡くなっているので、最晩年の作品ということになりますね。レーベルにもある通り3楽章形式です。どのような経緯でこの曲を作ったかについては、正直分かりません。とあるレコードの解説には「自由、進歩、そして人生を満喫することへの関心」を表現しているとありましたが、うーん、それはタイトルがアメリカだからというところから出発して書いた、アメリカの美化のような感じもしなくもない…。
第1楽章の<ニュー・ランチョ・ディアブロ>ですが、これはどうやらカリフォルニア州にある「ランチョ・ディアブロ」というコミュニティの名前のようで、アメリカ西部との関わりがありそうな雰囲気が漂っています。荒野へ向かっての叫びのような楽想から始まり、ワイルドな感覚があります。
第2楽章は<ニューオーリンズ>と題されており、ついディキシーランド・ジャズなどを想像してしまうのですが、あに図らんや、緩徐楽章になっています。あえていえば、黒人霊歌からのインスピレーションがあるということなのかな。
第3楽章は<ニューヨーク>ということで、なにかジャズっぽい音でもあるのかなと思ったのですが、そういうものはなく、モダンで活力のある都市を描いたものなのでしょうか。確かに第1・第2楽章とは明らかに違う感覚はありますね。
ということで、全体として、曲がどれほど「アメリカーナ」なのかは分かっていないのですが、アメリカを形作る地域的な違いを作曲者なりに音で描き分けたという感じの作品なのかもしれません。