第5番のソナタは New World から別のピアニストによる演奏がCDでリリースされている。第1楽章は、すべての音程関係(短2・長2、短3・長3、完全4…)を含む音列が使われているそうだが (C, As, D, F, G, H, B, F, Es, E, A, Fis)、12音全てではなく、F音が重複し、Cesは欠けているとのこと。ソナタ形式を踏襲しつつ、再現部では(2つではなく)3つの主題が逆の順番で提示されるとのこと。
Wikipediaで《山の音楽家》を調べると、おそらく歌詞の内容からドイツ民謡のIch bin ein Musikante が原曲であると書かれている。ただ、そこから原曲とされているYouTube動画を見ると、旋律は全く違っていてむずむずしたりする。歌詞にしても、小鳥・うさぎ・小リスなどの動物が登場しないのである。
ところがアメリカの音楽史を調べていて、Sing Hallelujah, Praise the Lord! というモラヴィア派の賛美歌に出会った(チューンネームはBECHLAR。19世紀、John Christian Bechlerという人が作曲したことに由来する)。そしてこの賛美歌旋律が、《山の音楽家》の歌いだしと全く同一なのである。AABA形式で、Bの部分は《山の音楽家》とは全く違うのだが、A部分については、Ich bin ein Musikante どころではない一致だ。
ドン・ギリス:《辺境の町の肖像 Portrait of a Frontier Town》組曲から第3曲<牧場主の家でのパーティー Ranch House Party>演奏=スタンフォード・ロビンソン指揮ニュー・コンサート・オーケストラ(New Concert Orchestra; Stanford Robinson, conductor)
ギリス:《これが我らのアメリカだ This is Our America》作曲者指揮管弦楽団、レイ・ミドルトン (Ray Middleton 独唱)、リズ・モーガン・シンガーズ (The Rhys Morgan Singers)
New Music Quarterly 1013 (N.M.Q.R. 12・13、SPレコード) <録音=1934年5月>
CARL RUGGLES: Lilacs; Toys, Judith Litante, soloist
CHARLES IVES: Barn Dance; In the Night (from "Washington's Birthday")
Pan American Orchestra
Nicholas Slonimsky, conductor
FIRST RECORDINGS
New Musical Quarterly 78rpm disc 1013A, B (N.M.Q.R. 12, 13)
Recorded in May, 1934
Digital transfer by F. Reeder
ヘンリー・カウエルが主導し、チャールズ・アイヴズが資金援助をしていた New Music Quarterly の録音。Archive.org にはいろんなトランスファーがあるようだけど、録音自体は、これだけということかな。おそらくスロニムスキーの録音は、かつて他の曲がLPレコードとしても出ていたので、それもこのNMQRじゃないかと思うのだけど、とりあえず、これ自体は貴重な録音だろう。アイヴズは、やっぱりおっかなびっくり感(これでいいのかなあ、っていう感じ)があるなあ。
最近個人のコレクションからお譲りいただいたアメリカの室内楽曲のレコードで、おそらく最も珍しく貴重な1枚。1955年に書かれたハロルド・C・ショーンバーグ著『LPレコード・ガイド:室内楽・器楽曲編』 (Schonberg, Harold C. The Guide to Long-Playing Records: Chamber & Solo Instrument Music. New York: Alfred A. Knopf) には「すでに廃盤となっているが、万が一みつけたときのために心に留めておく価値はある」と記されている。DiscogsによるとLP発売は1956年となっているが、このショーンバーグの記述から、そのデータが誤りである可能性がある。シンクレアの作品目録によると、この演奏は1946年に録音され、1947年頃に SP組レコード 775 として発売されたとある。そうすると、1940年代終わり頃から50年代前半まで録音が出回っていたということになりそうだ。ちなみにリチャード・ワレンによるアイヴズのディスコグラフィーはLP発売を1950年としている。
最近個人所有のコレクションからアメリカ音楽関連の音源を譲り受けた。CRIのレコードも多く、そちらはSpotifyなんかで簡単に聴けるしライナーもNew World Recordsのサイトから簡単にダウンロードできる。しかし中には入手が難しいものもあり、これもその1枚といえる。Music in Americaのシリーズは一般発売されておらず、もっぱら図書館に納入されていたアメリカ音楽のシリーズだ。アメリカ音楽遺産保存協会というのだろうか、カール・クリューガー (アメリカ国会図書館サイトの情報によると、彼は「アメリカ人指揮者」だそうだ) が創設し、運営したということになっているらしい。クリューガーが指揮した音源については、Bridge レコードがいくらかCD化している。ただ、CD化されていない音源も多い。
Ernest Bloch: At Sea Lara Downes, piano. Album: America Again (Dorian 92207)
ブロッホがフィラデルフィア滞在時に書いた作品なんだそうだ。美しい。
Harry T. Burleigh: From the Southland: Movements 1, 2, 5, 6. Lara Downes, piano. Brevard Music Center, Parker Concert Hall, Brevard, NC. バーレイっていうと、黒人霊歌のアレンジで有名だけれど、途中に《誰も知らない私の悩み》が登場してびっくりした。1910年の作品。
Margi Griebling-Haigh: Rhapsody for Violin and Piano. Peter Otto, violin; Randall Fusco, piano. Cleveland Composers Guild, Drinko Recital Hall, Cleveland State University, Cleveland, OH マーギー・グリーブリング=ヘイっていうのは初めて聞く作曲家だ。番組ホストのフレッド・チャイルドによると、彼女は奨学金を得て大学で作曲を学んだのだけれど「アカデミックな作曲」に興味が持てず、最終的にはオーボエ演奏で学位を得た人だそうだ。ただ作曲自体はプライベートな関心として続け、娘の誕生を機に書いたのが、このヴァイオリン・ソナタだそう。「アカデミック」というのは、この場合、やはり「無調」「セリエル」ということなのか、とてもロマンティックなヴァイオリンの小品だ。
Florence Price: Passacaglia & Fugue. Alan Morrison, organ. Spivey Hall, Clayton State University, Morrow, GA プライスって、ニューイングランド音楽院で作曲と同時にオルガンも習っていたのですね。シカゴ、1930年に虐待のため離婚し、シングル・マザーになった彼女はサイレント映画やラジオのためにオルガンも演奏したことのこと。1927年のこのオルガン作品は、タイトルからしてバッハ色が濃厚。
ジャケットの他にはインサート(曲目解説)が入っているのだが、オープニング・テーマは曲目も書かれておらず、当然のように解説もなし、最後の《ソー・イン・ラブ》に至っては「⑨ソー・イン・ラブ (クロージング・テーマ) SO IN LOVE ■コール・ポーター作曲」とだけあって、解説部分は空白になっている。書くことがなかったのかな? 当時はまだ、これがモートン・グールド編曲だったということが確定していなかったということでもあろうか。
肝心のSo in Loveについては、アレンジ元として渡された音源が、グールド・オリジナル音源の2:10くらいまでなかったのか(あるいはその後もしばらくは残っているが最後まではなく、2:10部分までで終わらせようという決断に至ったのか)、そこまではグールド版のテイストをかなり残して(耳コピ+)アレンジしているのだが、2:10部分に到達したらAbからFmに転調。そしてモリエール版では、ここからAメロに戻って、オリジナル2:10の部分までの繰り返しになっている。そしてオリジナルの2:10部分(2回目)になったら、Abで華やかに終わるのだった(ちなみにグールド版はEbで終わっている)。2回繰り返しているのは演奏時間の尺が短すぎる問題があったのかもしれない。