2024年4月5日金曜日

フィリップ・ジェームズ《ラジオ局WGZBX》(1932)

ジュリアス・ヘギー指揮アルバニー交響楽団 (Albany Symphony Orchestra; Julius Hégyi, conductor)
YouTube (こちらではオーケストラはアラバマ交響楽団 [Alabama Symphony Orchestra]になっている)

1932年、アメリカの民間ラジオ放送NBCによって主催された作曲コンテスト(全米のラジオリスナーも参加し投票した)で、見事1位を獲得し、ジェームズの名を一躍有名にした作品。ニューヨークで8月に作曲され、10月にオーケストレーションが行われている。放送初演はコンテストの審査員の1人のレオポルド・ストコフスキーによる指揮で、オーケストラは(トスカニーニが来る前の)NBC交響楽団である。

《ラジオ局WGZBX》は4曲からなる組曲で、「WGZBX」は存在しない放送局の名前である。作曲者ジェームズによると、この曲は「ラジオの音、ラジオの感動的な力、ラジオの若さ、ラジオの活気、ユーモア、苛立ち、そしてラジオと私たちの日常生活との関係」を描いたという。初演以来、この作品はラジオを風刺する曲と解釈されてきたが、それは作曲家の意図したところではなかったようだ。初演時はあちこちで演奏されたようだが、1940年代に入ると、その人気も失せてしまった。

<ロビーにて>と題された8分の6拍子の第1曲は、「大きなラジオ局の廊下 」を描いている。賑やかな放送局の雰囲気がロンドのように繰り返し登場するテーマで描かれ、間にラジオ番組の背景音楽なのか、「インディアン音楽」、中国風の音楽、そしてサキソフォンが飛び出す(ジャズの番組?)などが挟み込まれている。

第2曲<混信>は嵐が吹き荒れるなかで聴くラジオ番組という趣旨のようで、緊張感のある弦楽器から曲が始まる。機械文明を象徴するのか「ロボット」も登場する(この録音だと、舞台下手側、メガホン?か何かで叫んでいるようにしか聞こえないのだが…)。ピッコロが高音で「ピー」っという、ラジオからのノイズらしいものを吹く箇所もある。

<眠りの時間>と第された第3曲はメロドラマの一風景なのか、ヴァイオリンのロマンティックな音楽。ロンド形式による第4曲<マイク狂>は、我先にとマイクに群がる素人集団の賑やかな様子ということで、ラジオがお茶の間のエンタメのメインを牛耳っていた時代を象徴するかのようだ。

いまや忘れられた描写音楽という感じだが、初演当時は、ラジオが普及していた時代でもあるし、当世風だったのかもしれない。

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