【連載】県立図書館「廃止」を問う(4)=貸出数だけが重要なのか/神奈川 (「カナロコ」)
神奈川県立図書館の閲覧・貸出「廃止」に関する「神奈川新聞」の連載が続いています。県内の公共図書館に占める両館の貸出数の比率が低いことが今回の問題の背後にあるというのが県教育委員会における議論の背後にあるようですが、この記事において指摘されているように、確かに貸出数だけを見ているだけでは分からないことも多いですね。個人的な認識では、図書館=貸本屋ではありませんので(市立図書館は、ベストセラー等も含めて、そちらの方向が強いのかもしれませんが)、貴重な資料への自由なアクセスを通じて県民の文化を牽引するような大きな役割を担う活躍を、これからも期待したいところです。
私が時々お世話になる視聴覚資料室の場合ですが、年配の方を中心に、バスケットにCDを何枚も入れていらっしゃる方を拝見します。おそらくレコードやCDの場合は図書とは性格が違って、老後のたしなみとして音楽を聴くというのもあるのでしょうか。所蔵される音源にしても、例えば近所のレンタル屋さんとは違うのが県立の視聴覚資料室の特徴でしょう。
クラシックやジャズが「高尚」だと言いたい訳ではありませんが、ここは日本の伝統音楽の音源が揃っているのが貴重ですし、いわゆる「商業主義」に乗りにくいながら芸術性・文化的意味のある音源は、借りて、聴いて、その魅力を感じてもらうことが、とても大切だと思います。クラシックに関していえば、ワーグナー愛好家のコレクションだけでなく、音楽学者や評論家が寄贈した大量のLPレコードのコレクションもあって、私が勤務する大学の図書館にはない貴重なものも、ざくざく見つかります。「こんなものまで借りて聴けるのか」と思う夢のような場所、というのは大げさでしょうか? 少なくともお近くのクラシック愛好家は一度、訪れてみては良いのではないかと思います。
本当は楽譜も貸し出してもらえるのが一番ですが、著作権のからみもあって、難しいのでしょうか。私は20世紀アメリカの作曲家の伝記を読むことが多いのですが、その中に、「図書館の楽譜を借りて勉強した」という記述を何度か見たことがあります。ボストンの公立図書館なんかは、確かに大きな楽譜のセクションがあって、とても便利ですね。別に作曲を専門とせずとも、好きな曲の楽譜があると、それを眺めてみるだけでも、興味が湧くものです。
一応大学で音楽ジャーナリズムを教えている者としては、まだまだ神奈川県立図書館で借りるべき・聴くべき名演・名盤というのはたくさんあるという認識です。
また、県立レベルの図書館、いわゆるリサーチ・ライブラリーの場合、貴重資料の所蔵ということもありまして、館内利用の資料を使って、その場でやる作業も多いですね。去年の3月まで住んでいた富山県の県立図書館でも、明治時代に発行された教育雑誌や唱歌集など、貴重なものがたくさんありました。その多くは、館内閲覧のみで行っているのが普通ですね。今後こういうものが閲覧中止なると、いちいち許可を申請するなどの手続きが必要になるのでしょうか? 「研究者」以外の人でも、アクセスは確保されるのでしょうか?
いずれにせよ、機会があれば、神奈川県立の音楽・芸能系の古い資料を探るようなことをやってみなければいけないかなあと思います。
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