2008年6月7日土曜日

ワルターのシューマン、チャイコフスキー

・Bruno Walter in America with Toscanini's Orchestra. NBC SO; Bruno Walter, cond. Grammofono 2000 AB 78525.

シューマン4番+チャイコフスキー5番で、1940年録音。無理にエコーをかけたりステレオ効果を出したりしている。この方が良いっていう人もいるのかな?

個人ブログで取り上げている人にはえらい評判が悪い。チャイ5の第4楽章、ソナタ主部のテンポがやたらと遅いけど、コーダ部が迫るとぐいぐいとテンポを上げたりしてて、ストコフスキーみたいだなあ、なんて思ったりもする。ただストコフスキーのような華麗な響きよりも、太く朗々とした鳴りを大切にしているとは思う。

一方のシューマンは、オーケストレーションにかなり手が加えられている。太い鳴りに加えて、明るさが増した感じだ。「シューマンはオーケストレーションがうまくなかった」というのは、私は中学生のころ、NHK-FMで諸井誠さんがラジオ番組で話していたので覚えているが、実はそのシューマンを聴いて、特にオーケストレーションに問題を感じたことがないというのが本当のところだ。ロイ・グッドマンとザ・ハノーヴァー・バンドの録音を聴けば、余計にそう思ったりもする。

このCDに収められている2つの作品の、一般に漠然と考えられているテンポ設定やフレーズの作り方を離れられないと、ワルターの2曲の演奏が風変わりに聴こえる可能性はあると思う。評判が「悪い」というのもうなずける。ただ、表現に対する飽くなき欲求に圧倒されたので、私は満足している。モノラル時代のワルターって、やっぱり野心的な感じがして、面白いですね。